浅野秀弥の未来創案

【住吉市民病院跡地問題】

2016年12月22日

妊婦や子どもの命守れ

 2018(平成30)年春に閉鎖される市立住吉市民病院(住之江区)の問題で、関係する大阪府議に府庁健康医療部から「閉鎖を引き継ぐ形で民間医療法人が同市民病院の既存棟を使い“民間病院分院”として入院・外来診療を開始。その後、その医療法人が現地で建物新築を周辺住民との日照権問題などをクリアできれば、その2年後の平成32年3月に完成開院」という内容のお知らせが届いた。

 聞けば分院としての医療継続には2年間で11億円の赤字が見込まれ、これを補助金の形で穴埋めすることを要求している。もともと現地で新築建て替え予定だった同病院が突然閉院となったのは、就任した橋下前市長が「2キロしか離れていない住吉区に府立急性期・総合医療センターがあり、二重行政だ」と指摘し、強引に一本化しようとしたのが発端だ。「総合医療センターでは地域の妊婦や子どもたちへの地域医療が行えない」と地元で強い反対運動が起こり、渋々民間病院を誘致し産科や小児科を肩代わりさせるはずだった。しかし、建物の新築が日照権の問題などで遅れ、民間病院側は2カ所で病院運営を強いられ、その結果年間で11億円の赤字という試算になり問題は複雑化してきた。

 私の思うには、現在大阪市が取り組むべき喫緊の課題はこれまで市民病院が積極的に取り組んできた貧困者妊婦や若年出産の「新生児貧困問題」だ。論点はこの問題の解決に向け集中させるべきで、市民病院問題もこの枠内で再考されるべきだと考える。

 吉村市長は「税金投入以外の支援方法がないか検討している」と述べたが、現時点ではベストの選択肢が見当たらない。橋下氏の思い付きで後継者が痛い目に遭っている。わざわざ二重行政をやり玉に挙げるポーズを示すために、地域に根ざした病院を安易に統廃合しようとするからこういう新たなムダが生まれる。知事や市長は、「コストメリットが都構想の第一目的」に掲げているが、まず「大阪市民の命と暮らしを守る」という大前提を忘れてはならない。

 あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。