浅野秀弥の未来創案

【インバウンド景気の危うさ】

2017年9月7日

株高円安で大丈夫か?

 現在の為替相場は1ドル110円前後で推移しているから、海外からの観光客も「7月は過去最高の268万人来訪」と喜んでいられるが、その観光客もかつての“中国人富裕層が爆買い”なんて遠い昔話で、今は語り草だけ。中国や台湾の一般の観光客は、医薬品などの日常使いの買い物中心で、欧米人は買い物を余りせず飲んだり食べたりの体験型旅行にシフトしている。

 さらに都市部の高級マンションなどの不動産価格高騰は、中国人グループが投資目的で値をつり上げているだけ。この1年で東京や大阪の都心部地価は3〜4倍に上がり、建築費も同様に五輪関連で高騰。株価や日本経済は海外投資家の下支えで保たれている状態だ。今注目のビットコインも外貨を持ち出せない中国の金持ちが万一に備え、海外ですぐに使える換金性を重視し重宝がって異常に値上がりしているだけ。国家の裏付けがない貨幣は砂上の楼閣だ。

 小口投資家に対し私は「日本経済はプライマリーバランス(基礎的財政収支)が悪すぎる」と指摘している。もっとも欧米のプライマリーバランスも大してよくないし、株価は各国とも高値で推移しているから、何となく好況感を維持しているだけだ。

 外国為替が円高に振れた途端、海外投資家たちは一気に資金を引き上げ、日本経済は急失速する。そして日本発の世界恐慌の危険性すらある事を見誤ってはならない。

 でたらめ外交と政権運営でも「経済さえよければ、国民は文句をいわない」という発想を日米トップが同時に抱いている“危うさ”を両国の有権者は気付かなければならない。目先をごまかし、実体経済と懸け離れれば離れるほど、後に訪れる現実は壊滅的な物となって跳ね返ってくる。基盤の強い安定経済を生み出す基幹産業と、それを支える安定消費による好景気ではなく、単なるマネーゲームによる見せかけの物価高を景気回復と錯覚させるのがアベノミクスの正体。これ自体米国経済のマネなのだが、そこからの脱皮が遅れれば遅れるほど、日本の傷は大きく深くなる。

 あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。