
前回、建築士とは、耐震性や耐久性、居住性といった、住まい全体についてのプロデューサーであり、さらに、個々の職人の技を生かすためのプロデューサーでもあると書かせていただきました。
今回はもう一つ、建築士としての大切な仕事についてお話したいと思います。
住まいなどの建物は、住む人の生活環境だけでなく、周辺環境にも大きく作用します。
特に、「材料に何を選ぶのか?」は、居住性はもちろんのこと、環境への影響を考えるにあたっても大きな問題です。
例えば、コンクリートや鉄などといった人工素材は、原料に限りがあると同時に、製造には非常に大きなエネルギーを必要とします。
一方、木材は自然のものであるため、生産には余計なエネルギーを必要とせず、さらに、地球上で唯一、二酸化炭素を吸収してくれる植物でもあります。
現在国内に豊富にある成長した木を伐採し、それを柱や梁(はり)などの構造材に利用し、その後また苗を植え、そこに若い木が育つと、さらにたくさんの二酸化炭素を吸収してくれます。
日本は、第2次世界大戦後、戦後復興のための大切な資源として、積極的に杉(スギ)や桧(ヒノキ)を植林し、代々育てることで、70%の森林率を誇る森林大国になりました。
しかし、現在、これらの木は資源として使われることなく、木材自給率は20%程度にとどまっています。つまり、住宅建築には、ほとんどと言っていいほど、輸入した木材が使われているのです。
国産の木材が使われないことで、森林には人の手が入らず、放置されているのが現状ですが、もともと資源として使うために植えられた杉や桧は、適度に伐採(間伐)しなければ、互いに成長を阻害し合い、やせ細った木々が乱立する不健全な森となります。
このような森は、水質浄化作用に乏しく、また保水力もないため、土砂崩れや山崩れ、洪水といった、自然災害への抑止力を失い、森に暮らす生き物にも大きなダメージを与えます。
さらに、はるばる遠い外国から木材を運ぶために必要な輸送エネルギー量を考えると、日本は莫大(ばくだい)なエネルギーを無駄に消費していることにもなります。
一方で、高温多湿な日本の気候風土にそぐわない輸入木材への過剰な薬剤(防腐・防虫など)使用も問題視されてきました。
本題にかえりますが、住まいづくりにおいて、材料を決定するのは建築士です。その決定権を持つ職業として、個別の住まいだけでなく、住む人の持続的な生活と同時に、次世代の環境について考えることは、とても大切なことではないかと思っています。私はこれも、住まいづくりのプロデューサーとしての大切な仕事ととらえています。
住まいづくりをお考えの際には、間取りだけでなく、住まいを支え続ける構造としてとても重要な木材に、少し興味を持っていただければ、もっともっと密度の高い住まいづくりができると思います。森林見学ツアーやそのほか、森と建築にかかわるイベントも行っていますので、ご興味があれば、ぜひ、参加してみてください。
(みずたに・よしかず 大阪府豊中市)










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