
前回は、建築と森林・資源といった話をさせていただきましたが、今回は実際に私が取り組んできた住まいづくりについて、お話させていただきたいと思います。
私は主に自然素材を使った、昔ながらの技術を生かした住まいを設計しています。素材には、国内で育った無垢(むく)の木や土、そして紙をよく使用します。
以前、竹を編んでつくった壁(竹小舞)に土を塗った土壁の住まいづくりに取り組みましたが、昔は当たり前のように行われていた土壁の家づくりは、今では大変珍しくなってしまいました。
土は、実は大変優れた素材であり、日本特有のじめじめした夏の湿気を吸い取って、涼やかな空気をつくりだし、また乾燥の激しい冬には空気に湿気を与え、インフルエンザなどのウイルスや菌の繁殖も抑えてくれます。土は周囲の環境に順応し、季節を通じて湿度をコントロールしてくれるのです。
例えば、皆さんも田舎の古い建物に入った時などに、都会では感じられない清々(すがすが)しさを経験されたことがあると思いますが、それが土のもたらす快適性です。
さて、この土壁の住まいには、本格的な茶室があったこともあり、通り庭や縁側、障子や畳に木製雨戸など、古き良きものを十分に生かしました。通り庭の四季をうつす植栽、居心地のよい縁側、障子に映える夕日、風のわたる部屋…。昔の家づくりには、日本の風土に合った、四季を楽しむためのヒントがたくさんあるような気がします。
一方、小さなお子さん2人をお持ちの若いご夫婦の住まいづくりをさせていただいた時には、可変性に重点を置き、子供の成長に柔軟に対応できる空間づくりを考えました。子供が小さい間は、みんなで大空間を共有し、成長とともに個室が与えられるように、移動式の家具で空間を仕切ることを提案しました。
何十年もの生活の中で人は成長し、家族も変化します。そんな月日の中で、色や味わいを増す自然素材の経年変化を楽しむように、住まいがいかに変化に順応できるかということも、重要な要素の一つだと思います。
さらに、設計するにあたっては、周囲の町並みや風景をじっくり観察し、その地域は昔どうだったのか、今後どうなっていくのか−などを考えます。なぜなら、地域にはそれぞれ特有の雰囲気があり、それは歴史であり継承されてきたものだからです。これからの地域の町並みをつくる、その第一歩として住まいづくりをとらえるようにしています。住まいは集まれば町になり、地域になり、それが日本の風景、さらに文化になる−そんな視点で、住まいを設計したいと思っています。
「夜の雰囲気が行燈(あんどん)みたい」と、以前設計した住まいの近所に暮らす方がおっしゃいましたが、そんなふうに地域の方にとっても潤いとなり、町のシンボルとなるような住まいづくりができればと思っています。
私にできることは、斬新な住まいづくりではなく、風景に馴染(なじ)み、誰にとっても違和感がなく、住む人に居心地よく、飽きのこない、世代を超えて長く暮らせる住まいを提供することだと思っています。
(みずたに・よしかず 大阪府豊中市)










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