連載・特集

澪標 ―みおつくし―

“珍しい芸人”でテレビ初出演

本町 靱
マンガーソングライターイラストレーター
2009年11月17日

 当たり前のことですが、予期せぬ出来事というのは思いがけなく起こるものです。かねてよりこちらのコラムでご紹介させていただいております、私の「マンガーソングライター」の演芸が、2009年に入り一気にメディアに取り上げられるという事態が発生しました。

 きっかけとなったのは友人が記者を務めるインターネット新聞「梅田経済新聞」です。毎年お正月になると、北浜にあるカフェバー「フレイムハウス」のライブスペースをお借りして演芸会を開催するのですが、その模様を掲載していただいたところ、思わぬ反響があったのです。

 「マンガーソングライター」という一風変わった肩書や、四十路(よそじ)手前の女性がお面を装着しながら喜々として歌う様子にインパクトがあったのか、記事をご覧になった情報誌の方や新聞社の方からご連絡が届き、ちょっと珍しい芸人としてご紹介していただく機会に次々と恵まれました。こんなこともあるのだなと不思議な気持ちでいたところ、さらに今度はNHKテレビの方から、お昼の情報番組への出演依頼をいただいたのです。

 これは何だか面白そうと、とっさに飛び付き承諾をしたものの、しばらくすると私の胸に、何やらむくむくと暗雲が立ちこめてきたのです。テレビなんて。この私がテレビに出るなんて。あんな学芸会のような代物が公共の電波に乗って見知らぬ方々の目にさらされるなんて。しかも生放送。私なんかがライブという状況でまともにモノを喋(しゃべ)ることなどできるのか…。

 人さまの注目など浴びたこともなくモグラのように生きてきた人間の自意識が、ここにきて全開バリバリ状態です。次から次にわいてくるネガティブな想像を止めることができなくなり、どうしようどうしようと、ひとりハルマゲドンの様相で友人にそんな気持ちを打ち明けたところ「嫌なら断ればええだけやん。でも後悔せえへん?」とあっさり返されました。

 本当だ。嫌ならやめればいい。だけどやらなければきっと後悔する。とっさに感じたあの「面白そう」という直感を信じてみよう。聡明(そうめい)な友人の言葉の力で、私の心はすっかり軽くなったのです。

 おかしな芸は電波に乗ってもやはりおかしなモノでしかありませんでした。ですが、一つ一つの作品を丁寧にご紹介していただきながら、人間国宝のご子息である落語家さんに紙芝居めくりを命じ、大好きだった女優さんと笑顔を交わし、それはそれはいつものずうずうしい自分のままで、生まれて初めてのテレビ出演を楽しむことができたのです。

 ぼんやりとしていてつかみどころのなかった芸が、たくさんの友人や、こうして生まれたご縁のおかげでようやくはっきりしてきたと感じています。舞台を見てくださった方に「楽しかった」と言っていただけることも増えました。こんな私でもたくさんの人を笑顔にすることができるかもしれないと、最近ではそんなことを考え始めています。

 次回は、無謀なような、ささやかなような、私の「夢」について語ってみようと思います。

 (ほんまち・うつぼ 兵庫県西宮市)