連載・特集

澪標 ―みおつくし―

「100年に1度の不況」が自動車を変える(5)

塩原正朗
オートザム城北店長
2009年12月11日

ネット通販で商圏拡大

 「リーマンショック」以後、既に1年が経過しました。自動車業界でも、少なからず変化はありましたが、エコカー技術などは短時間で急進歩できるものでもなく、新製品投入による市場の活性化にも、大きな期待はできません。今後の日本の人口動態が国内市場に与える影響は計り知れないと心得るべきだと思います。

 われわれ中小零細企業が今後を考える場合、「インターネット活用で商圏を広げていく」ことは必須であります。投下資本が極小であるためです。商圏を設定し、インターネットで商品を提案するだけのことで、仕組みは簡単ですが、意外に奥深く、多くの時間を費やす、手ごわい仕事でもあります。

 今から15年前、インターネット通販が普及したばかりのころ、釣り具製造業経営者の方が、いち早くネット通販を手掛けられ、成果を上げておられました。その方の苦労話の中で、釣竿(つりざお)の通販に関して、大半の社員が反対で、その企画が進まなかったそうです。

 元来、釣竿は手に取って、振って、その調子とバランスを見て買う、ということが常識。それができないネット販売は邪道であり、消費者に受け入れられないというのがその理由とのことでした。

 しかしながら、釣竿のネット通販は大成功だったそうです。その経営者いわく、「お客さまを悪く言うわけではないが、ほとんどのお客さまは竿を手に取っても、実はその良しあしの判別ができていなかったのではないでしょうか。こちらが十分な商品説明を行っているか、ご信頼を得ているかが問題なのです」とのことでした。

 この話は、私どもが取り扱う中古車についても、そのままあてはまることです。ウェブサイトに掲載した中古イタリア車に、遠方のお客さまから、現車確認なしの注文が入り始めたのです。国産車より故障発生率の高いイタリア車でもあり、当時の私には常識で考えられないことでした。

 さらに10年経て、インターネットの活用で、今度は海外に中古車を出すようになりました。アフリカでも高性能なオーディオや人気デザインのアルミホイールを装備した車は歓迎されます。アフリカの人々も日本の人々も求めるものはいずこも同じ、意外に世界は狭いかもしれない、と感じます。

 国内・海外いずれの場合も、お客さまは代金を事前に振り込まれ、世の中が成熟したとはいえ、大きなリスクを背負った商品購入を行うのです。10年前には予想もしなかったことです。あっと言う間の10年ではありましたが、よく考えてみると、その間の世の中の変化には恐ろしさを感じます。

 私ども中小零細企業でさえ、このような状態です。必要が、競争が、不況が世の中を大きく変え、進歩させてきたのでしょう。

 表面的には、自動車の新商品・エコカー開発は遅々として進まないようにみえますが、この瞬間にも水面下で、熾烈(しれつ)な開発競争、努力がなされているようです。大変貌(へんぼう)した次世代自動車を見るのも、そう遠くはないのではないでしょうか。

 (しおはら・まさあき 大阪市城東区)