連載・特集

澪標 ―みおつくし―

1人でも多くの方に笑顔になってもらえる存在に

本町 靱
マンガーソングライター・イラストレーター
2009年12月29日

 絵を描いたり音楽を聴いたりすることが大好きだった子供のころにぼんやりと抱いていた夢の粒を、大人になってから寄せ集め、自ら生み出した仕事。それが「マンガーソングライター」です。自作の漫画紙芝居とそのテーマソングをウクレレ演奏で披露する演芸です。

 先日、友人が子供のころの思い出を語ってくれました。学校が終わると必ず誰かの家へ大勢で集合し、創作漫画を描いてはそのテーマソングを作り、歌って遊ぶという毎日を過ごしていたそうなのです。私が「それ、まるで今の私やな」と言うと、友人は「今のあんたはまるで昔の私や」と言って、2人で笑っておりました。

 「マンガーソングライター」という芸は、子供の時に抱いたわくわくする気持ちや夢中で過ごした時間を、多くの人の心に蘇(よみがえ)らせるのかもしれません。おかげさまで、各方面から出演のご依頼を数多く頂いております。

 学園祭やご結婚披露宴、企業の懇親会などでも活動の場が増え、演芸終了後にほろ酔いの年配の方が嬉(うれ)しそうなお顔で「それ貸してくれる?」と言って『ヤッコマン』のお面を装着され、職場のお仲間と無邪気にはしゃがれるご様子を遠くから眺めることは、今やすっかり私の生き甲斐(がい)です。お客さまに「私も一緒に遊びたい」と感じていただける芸なのだと嬉しく思う瞬間です。

 子供のころのぼんやりとした夢がだんだんと形になってゆくこと、そしてそれを実現できる環境に身を置けることは本当にありがたいものだと感じます。最近では、その夢がさらにじわじわと膨らみ始め、おこがましくも、こんな私にも何かができるかもしれない、などと考えるようになってきました。

 もちろん、今後も紙芝居や歌を作り出していくことに変わりはないのですが、私の舞台を見てくださった方々から「楽しかった」「元気が出た」というお言葉を頂戴(ちょうだい)するたびに、きっと誰もが、できれば笑って心穏やかに暮らしていたいと願っているのではないか。ならばたとえ一瞬でも、一人でも多くの方に笑顔になってもらえるような存在になりたい、そんな思いが心に浮かんでくるのです。

 誰に頼まれたわけでもない上に、偉そうなことなど言えるはずもない未熟者ではありますが、引っ込み思案で臆病(おくびょう)だった子供のころの私が今の私の姿を見たら、驚きながらも「夢を叶(かな)えていってるね」と褒めてくれるかもしれません。

 ところで、夢は夢でも先日の明け方に見た夢は、ゴリラに追いかけられるという強烈な内容でした。夢の中で夢中で逃げていた私です。本気で恐ろしかったです。あればかりは叶うことなく夢のままであってほしいと願うばかりですが、そうそう叶えられる夢ではない気もします。

 5回にもわたる連載の最後をくだらない話で締め括(くく)ったりして申し訳ありません。稚拙で私的なことに溢(あふ)れた文章を読んでくださった方々、それに対しご感想をお寄せくださった方々へ心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 (ほんまち・うつぼ 兵庫県西宮市)