連載・特集

澪標 ―みおつくし―

地域の一体感深める祭り

山田 重昭
LLP YUI企画共同代表
2010年8月31日

 夏から秋にかけては祭りの季節である。

 天神祭の船渡御(ふなとぎょ)。岸和田のだんじり。各社で行われる神輿(みこし)渡御。夜空に次々と打ち上げられる花火。今年の夏のような酷暑を引き合いに出すまでもなく、厳しい暑さと格闘するかのように、力の限り一連の神事に熱狂する人の姿がそこにある。見物するだけの人にとっても、祭囃子(まつりばやし)が聞こえてくると、妙にそわそわし、ダレ気味の気持ちを奮い立たせるものだ。

 昔、京都のまちなかの割烹(かっぽう)でアルバイトをした。祇園祭の宵山の頃(ころ)。ご主人がコンチキチンの練習に出掛け、テレビの生中継が入るというので、店の家族や従業員と一緒に見た。

 四条通に並んだ山鉾に上るお稚児(ちご)さんを見て奥さんが、「○○町の××さんとこの△△ちゃんよ」と声を上げた。祇園祭のようなイベント色の強い祭りであっても、町を単位とし、住人が中心となって作り上げてきた顔が息づいている。当たり前のことだが、知られざる一面を見た気がした。

 地元を遠く離れて暮らす人にとっても、祭りは郷土を思い起こさせるきっかけとなる。これも住んでいた新居浜というまちでは、秋の太鼓祭りが近づくと、普段は人気の無いシャッター街と化した商店街に若者が集結し、その期間だけまちの風景が変わった。盆・正月に戻らなくても祭りのときだけは欠かさず戻ってくるそうだ。

 近年、まちづくりの施策として、イベントを行って地域活性の起爆剤にしようという動きが活発であるが、祭り(フェスタ)こそ世界中で最も長い期間にわたって地域とともに歩んできたイベントの代表格であろう。

 ことさらまちづくりとうたわなくても、まちの一体感を深めるという意味において効果を発揮しているのは見てきた通りだ。私の住む住吉区の神社では、この数年の傾向として、祭りの担い手に30〜40代が増え、一時期離れていた子どもたちが祭りに戻ってきているそうだ。

 地域で人の繋(つな)がりが希薄になったといわれるようになって久しいが、少しずつ住民の意識が変わり始めてきたのではないか。事件があるたびに指摘される近隣の無関心、サラリーマンの定年後の居場所問題、孤立が招く自殺と虐待など、押し寄せる危機意識の中で地域で暮らす意味が問い直されてきたのだと思う。

 祭りや運動会などの地域行事は、活動期間が限られているうえ純粋に楽しむものだから気軽に参加しやすい利点もある。今からでも地域でデビューを果たしたいと思う方は、まずは身近な地域行事への参加から始めてみてはどうだろうか。

 (大阪市住吉区)



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