連載・特集

澪標 ―みおつくし―

人と人との出会いの場

山田 重昭
LLP YUI企画共同代表
2011年1月11日

 ビジネスの世界でも新しいコミュニティーを求める動きがある。

 各種サークル活動は盛んだし、習い事も自己のスキルアップよりそこで出会った人とのコミュニケーションを楽しんでいるふうである。

 毎週のようにどこかで異業種交流会が開催されているが、参加者は社内とは違った繋(つな)がりを求めてやって来る。異なる価値観を持った人との交流で刺激を受けるのが新鮮で楽しいそうだ。

 終身雇用・年功序列といったかつての企業文化が姿を消す中で、会社一辺倒だった会社員の意識に変化が起こっている。

 企業が社員の生活を丸抱えして愛社精神を育てた成長経済の時代、会社員は外部との接触がほとんどない一種のムラ社会にいた。こうした意識は低成長の時代に入っても長く尾を引いていたが、ここにきての社外コミュニティーが盛んな背景には、会社中心的価値観から脱却しつつある時代の変化があるように思う。

 新しいコミュニティーへの希求は働き方へも影響を及ぼしている。社会起業・コミュニティー・ビジネスといった活動である。

 利益追求よりも社会的使命に重きを置いた事業活動を指すが、注目すべきはそれぞれの活動団体が相互に連携をとることで、全体としてひとつのネットワークを形成しているケースが多い点である。

 ネットワーク型組織は構成員の相互刺激により自己変革を促し、高い創造性が発揮されやすく、ベンチャーやプロジェクトに適しているとされる。組織と言いながら横の関係性を重視する点で、むしろコミュニティーに近い協働の仕組みだ。

 私が代表を務めるYUI企画の事業形態であるLLP(有限責任事業組合)もこのネットワーク型組織を社会的に位置づけたものである。

 YUI企画はコミュニティー・ビジネスの起業スクールに通っていた者同士が、それぞれの起業実現のために相互にサポートをしようと集まったのが最初である。

 グループの名称を決めるにあたり“結”企画とした。“結”はメンバー間の繋がりを示すとともに、活動における多くの人との出会いを意味していた。

 私は長らく小売業の世界にいて店づくりを担ってきたが、今でも原点として思い出すのは初めての接客だ。中学生が少年ジャンプを持ってきてレジ打ちした、ただそれだけの光景なのだが、彼はつり銭を受け取るときに「ありがとう」と言ってくれた。

 このとき感じた嬉(うれ)しさは言い表せない。

 200円に満たない少年ジャンプを彼はどんな思いで求めたのか。色々(いろいろ)思いをめぐらした。

 たわいもない出来事だが、人と直接接する感触を知り、接客業に対する誇りを感じたのもここからだったんだとあらためて思う。

 YUI企画は今後も人と人との出会いの場を取り持つ役割でありたいと願っている。

 (やまだ・しげあき 大阪市住吉区)