澪標 ―みおつくし―

「美術」が仕事 その3

中津海智子
ギャラリーなかつみ
乙(いつ)企画代表
2012年9月4日

 画商の仕事、もう少し販売についてお話し致します。画商の間での有名なジョークに、「三大悪徳商売」いうのんがあります。これは何かと申しますと、TVのいわゆる2時間ドラマなどで頻出するあこぎな職業の悪人や敵役につきものの悪徳商売が三つある、曰(いわ)く「悪徳弁護士」「悪徳不動産」「悪徳画商」という次第。

 バブル最盛期の人気ドラマに証券会社社員が登場、劇中でお客さまに大損させて自殺という設定に証券会社大手がこぞってTV局に抗議したと聞きましたが、「三大悪徳商売」の面々が抗議活動をしたというような話はとんとありません。世間では舌先三寸、仕入れ値も不明で大金を動かし、大儲(もう)けしている職業との印象が定着しているせいでしょうか。

 弁護士さんや不動産屋さんの実態は分かりませんが、画商については苦笑いするしかありません。確かに商品単価は比較的高価ですが、真(ま)っ当(とう)な商売はどこでも同じ。画商だった父は「大儲けするにはお客を泣かすか、作家を泣かすか、同業を泣かすかやな。そんなことしたら嫌われて、息長うは続かへん」と言うてましたけど、その通りやと思います。

 ところで、家族向けの7人乗りミニバンは350万〜500万円で何万台も売れてますが、トヨタや日産は日本を代表する会社で、「悪徳商売」と揶揄(やゆ)する人はいてません。画商が扱う作品はだいたい高うても200万円ぐらいまで、売れ筋は20万〜50万円ぐらいですから家具、家電や着物と似たり寄ったり、欧米のブランド物に比べても突出している訳でもありません。仕入れは決まった相場があり、格安に仕入れて大儲けできるような僥倖(ぎょうこう)もまず無いもんです。

 日本家屋に床の間がなくなり、壁に金具を取り付けにくいマンションが普及して、版画はともかく、油絵は売れにくうなりました。

 一方で美術館・博物館などに高額な作品を納めているのではとお疑いでしょうけど、新規の開館で収蔵品を一気に購入する場合を除き、潤沢な予算が組まれることはほとんどありません。日本美術は保存、展示に費用も掛かるのに、地方自治体の既設の美術館・博物館の関連予算は驚くほど少ないもんです。

 少し以前の資料ですが、国立博物館(現在は独立行政法人)では、例えば東京国立博物館は22億円(2009年度。税金8割、入館料等自己収入2割)。巨額なようですが、大英博物館107億円、ルーブル美術館288億円(共に08年度)と比較すれば桁違いは一目瞭然。東博200万人に対しルーブル800万人の年間入館者数の違いを勘案しても、日本の文化予算の実態はお寒い限り。

 「事業仕分け」では「収集拡充は認めるが国費は出さない。レストラン等貸与施設には競争原理を取り入れ、自ら稼げ」と指摘されたとか。後世に自国の歴史、伝統文化を保存し継承すべき事業を、当面の財政事情だけで「仕分け」してええもんでしょうか。

 他に削れる予算なり何なりがぎょうさんありそうなもんです。という訳で続きは次回に改めて。

 (なかつみ・ともこ 兵庫県西宮市)