澪標 ―みおつくし―

通勤時間とスマートフォン

後藤 浩之
ごとう内科クリニック
2017年4月28日

 私は電車で通勤しています。朝は混雑していますが、座席に座っている人も、立っている人も、スマートフォンを操作している人が非常に多いです。混雑の中、ゲーム専用機でゲームをしている人もいます。帰宅時も、多くの人がスマートフォンを操作しています。本や新聞を読んでいる人もいますが、少数派となっています。

 昔は通勤電車といえば、多くのサラリーマンが新聞やスポーツ新聞を読んでいる光景が日常でしたが、様変わりしています。駅の売店も新聞を置いていますが、少ない部数しか置いていません。

 日本人はスマートフォンしかすることがないのでしょうか? と思ってしまいます。いったい何にはまっているのか気になります。他人の画面を見るわけにはいかないので、詳細は不明ですが、ネットニュース、SNS、ゲーム、ライン、などをされているのでしょうか?

 何をしようと、その人の自由なのですが、スマートフォンばかりしていると健康には良くないこともあります。例えば、眼精疲労により頭重感や視力低下。首の前屈により、脊椎に負担がかかり、肩こりなどの原因にもなります。ゲームや音楽の音量によっては難聴を誘発するおそれがあります。

 さらに、思考回路の単純化を危惧しています。スマートフォンに限らないのですが、インターネットの普及は人々の考える時間を奪い、思考能力を低下させています。疑問点は検索で全て解決するという癖をつけてしまいます。自分の力で考えたり、経験しながら身につけていくこと忘れ、書物や新聞などから情報を集める力も失っていきます。

 また、すぐに解決をしないと気がすまない性格になってきます。私のところに来られる患者さまで、すぐに病気を治してほしいとか、直ちに症状を消してほしいと言われる方がいます。しかし、残念ながら病気というのは、適切な治療をしていても、時間がかかるのです。しかし、ネット時代に生きる現代人には、待つということが苦手になってきているように思えます。

 私は、朝の通勤時間、今日一日の仕事の予定を頭の中で確認しています。そして、解決しなくてはいけないことを考えています。仕事の準備を頭の中でしていると、仕事にスムーズに入っていけるのです。今朝もこの原稿のことを頭の中で考えていました。帰りの電車の中では、外国語のラジオ講座の録音を聞いたり、小説を読んだり、好きな音楽を聞いたりしています。スマートフォンはあまり使いません。

 皆が同じような姿勢で、決して幸せそうに見えない顔つきで、何かに取りつかれたかのようにスマートフォンを操作する姿を見ながら思います。10年後の通勤電車の中の光景はどのようになっているのでしょうか?

 (ごとう・ひろゆき、大阪市都島区)