澪標 ―みおつくし―

人工知能と医療

後藤 浩之
ごとう内科クリニック
2017年10月13日

 人工知能の開発と利用が進んでいます。人工知能はさまざまなデータから学習して判断します。医療にも人工知能を活用したらどうかという議論があります。

 患者さんの症状や情報から検査の指示をしたり、検査データから診断をしたり、治療方法を提示したりすることを期待されています。現在の医学知識や臨床データは莫大(ばくだい)なため、一人の人間の知識量には限界があります。非常にまれな疾患や所見に対しては人工知能が優位であると思います。また、思い込みや主観が入ることがないのも人工知能の優位な点です。

 画像検査の診断も人工知能で可能ではないかと言われています。人が行うより異常な画像を見落とす可能性は少ないと考えられます。しかし、どのような異常かを診断するのに、他の検査データや画像の全体像から判断しなくてはいけない場合があります。画像データの蓄積のみでは対応しにくい事もありますが、将来的にはそれらの課題も克服できるでしょう。

 また、手術ロボットや検査ロボットの開発を進めていけば、侵襲的な検査や手術をロボットが行う事も可能かもしれません。人体の解剖データをインプットし、臓器・血管・神経・筋肉などの判別が可能になれば手術の可能性も見えてきます。手術ロボットは疲れることがないため、技術が確立すれば人間を上回るのではないかと考えます。

 それでは、医師は必要なくなってくるのでしょうか?答えはNOだと思います。患者さんの細かい表情変化や顔色など、人工知能では判別しにくい事があります。また、患者さんは必ずしも本当のことを言うとは限りません。型通りの質問では本当のことを言ってくれない場合があります。人は誘導されやすいため、人工知能の質問に誘導された答えを言ってしまう可能性もあります。治療の選択においても、家庭環境・所得・思想・宗教・性格などで選択が異なります。それらの調整は人間にしかできません。感情に訴えることもできません。

 医療の現場では過去に経験したことのないことも起こりえます。そういう時、人工知能では対応ができません。もちろん人にも正確な判断はできないかもしれないけれど、何か自分の正しいと信じる範囲内の対応をします。そして、どのような場面においても、最終的には誰かが責任を背負って診療をしていかなければいけません。人工知能に責任は負えません。やはり医師が必要なのです。

 人工知能やロボットの発達により、医療現場は激変するでしょう。医師や医療従事者の必要人数は激減します。少数の医師や医療従事者が、人工知能やロボットを活用しながら医療を行っていくことでしょう。安全性の確認など課題も多く、まだまだ実現には時間が必要ですが、いつかはそういう時代が到来すると思っています。

 (ごとう・ひろゆき、大阪市都島区)