澪標 ―みおつくし―

大阪発から全国へ 「登録文化財所有者の会」

寺西 興一
大阪府登録文化財所有者の会事務局長
「どっぷり、昭和町。」実行委員会会長
2017年12月1日

 もう、13年も前のことになる。天のいたずらとしか思えないことであるが、寺西家の老朽賃貸長屋が登録文化財になり、飲食店に変身した。そのおかげで、家賃収入も入り、一息ついたころであった。

 長屋を登録文化財にする時にお世話になった大阪府文化財保護課の林義久氏から電話が入り、府庁に来てほしいということであった。府庁に行くと私と同じように声をかけられた登録文化財の所有者の方が、7人ほど集まっておられた。

 林氏は「登録文化財の件数は、大阪が全国一であり、その大阪府で『所有者の会』を全国に先駆けて設立してほしい。そして、ゆくゆくは全国組織に発展させてほしい」ということで、そのために行政は支援するという。

 私は、大阪府の件数が全国一と聞いて驚いた。大阪のイメージは「商人のまち」ということで、お金が一番で文化とはほど遠いと思いこんでいたからである。

 その会合で大阪大学名誉教授の畑田耕一氏を代表世話人にお願いし、事務作業を私が担当することになった。後に畑田氏は会長に選任され、情熱と技能で当会をリードされたので、当会は大きく発展し、継続していった。

 さて、その時に集められた所有者は、林氏の一存であったので、他にも協力していただける方の発掘や会の設立に対する意見等を知るためにアンケートを行った。その結果、120人の所有者の内、約半数の方から回答をいただき、その内3分の2の方から「会に参加したい」との回答が得られ、14人の方から「発足会に参加し、協力したい」との積極的な意見をいただいた。

 後で知ったことであるが、大阪府のように行政が声をかけて『所有者の会』の設立を促すのは珍しいことで、逆に、会をつくろうとすると協力的でない行政もあるという。私にとっては、所有者の会は、登録文化財を保存・活用するために行政に対する応援団的な存在であると思っているが、行政によっては、圧力団体のようにとらえ「所有者の会が登録文化財の修理費等を行政に要求されたり、寄贈をいわれても困る」と思われているふしもあるそうだ。

 当会は、設立以降、文化庁など行政の支援を受けながら、登録文化財の活用内容を紹介する「どないする?文化財の活用とお金」「学校教育における登録文化財の活用」「商業利用の登録文化財建造物の管理と社会的評価」などの調査を行い、さらに、大阪府の登録文化財を紹介する冊子などを発行してきた。

 当会の設立以降、「京都府」「秋田県」「愛知県」「東京都」「和歌山県」「群馬県」でも所有者の会が設立され、最近「三重県」でも設立総会が開催された。

 このような全国的な広がりの中、昨年度、東京都の「所有者の会」の呼びかけで「全国の連絡会」が開催され、全国的な組織づくりに向けて前進しつつある。

 これは、林氏の夢が、十数年を経て現実の形あるものになってきたといえよう。

http://www.teranishike.com/

 (てらにし・こういち、大阪市阿倍野区)



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