澪標 ―みおつくし―

医療と時間

後藤 浩之
ごとう内科クリニック
2018年1月12日

 今回は医療における時間について書きたいと思います。

 皆さんは診療所や病院に予約なしで受診する場合、何時ごろ医療機関に行きますか? 朝早くでしょうか? 診察時間終了ぎりぎりでしょうか? 少しでも良い医療を受けようと思うなら、できるだけ朝早く受診されることをお勧めします。

 その理由は大きく二つあります。一つは、受け付けの順番通りに診療が行われるからです。予約のあるなしや病状によって順番が前後することはありますが、朝早く来られた方から診察が行われます。すると、当日する検査も、検査の予約も、入院が必要な場合は入院待ちの順番も、すべて早い方が早く行われるからです。検査の項目によっては、遅い時間になると結果が翌日になってしまうものもあります。

 入院に関しても、ほんの数分違いでベットが満床になり、当日に入院できなかったり、他の病院に転送されたりすることもあります。また、診療所で遅い時間帯に受診された場合、当日中に病院に受診できるように紹介をしようと思っても、病院の受け付け時間が終了して、翌日の受診になることも多々あります。緊急時には直接病院に電話して診療依頼をしますが、受け付け時間外であると、当日の診療を受けてくれる保証はありません。したがって、朝早く受診することは多くのメリットがあるのです。

 もう一つは医師や医療従事者も人であるという事です。時間が経過すれば疲労度が増します。もちろん全力で同じ状態で診療を心がけているのですが、能力の低下は避けられません。例えば医師の場合、午前中に3時間以上休憩なしで診察します。場合によっては昼食も取らずに夕方まで診療されている医師もいます。そんな状態で一番目の患者さまと最後の患者さまと同じクオリティーの診察ができるでしょうか? 車の運転でも数時間程度で休憩を勧められています。長時間の運転は集中力や運転能力が低下して事故を起こす可能性が高まるからです。

 したがって、医療現場でも休憩というのは必要なのですが、実際にはまとまった休憩が取れないのが現状です。急患で苦しんでいる患者さまを目の前にして、休憩できないからです。手術などの医療行為を始めると、休憩するから一部分だけ他の医師に代わってもらうという訳にはいきません。この問題に関しては医師の過重労働問題にもつながります。チーム医療の促進など、今後改善すべき課題でもあります。ただ、現状では少しでもいい医療を受けようと思うなら、朝早く受診するのをお勧めします。

 次に、医療においても時間の経過が必要な場合があります。風邪などのウイルス性感染症の場合、有効な治療法はなくても、自己免疫で自然治癒することが多いです。よく患者さまに今日中に治してほしいとか、昨日もらった薬が効果ないとか言われることがあります。しかし、残念ながら経過をみてくださいとしか言いようがない時もあります。有効な治療法がある疾患でも、治療が行われたらすぐに改善するわけではありません。リハビリが必要な場合は単に経過をみるだけではなく、患者さまの努力も必要になってきます。病気やケガを治すということは医療関係者も患者さまも時間と忍耐が必要なものなのです。

 また、検査の結果が出るまでの時間は患者さまにとっては不安な時間です。時には数カ月後の再検査で診断や治療方針を決める場合もあります。検査結果を聞くまで不安で何もできなかったと言われる患者さまも多いです。きっと祈るような気持ちで待っていたのだと思うと、私はできるだけ早く伝えてあげたいと思いながら、しかし必要な時間はかけながら、医療を行っています。医療における時間は一人一人の人生をも左右する時間であるような気がしてなりません。

 (ごとう・ひろゆき、大阪市都島区)