澪標 ―みおつくし―

タネは人類の共有財産

鈴木伸明
関西よつば連絡会・ひこばえ取締役
2018年6月1日

公正な機関によって守られるべき

 食べ物の仕事をずっと続けてきて考えることのひとつは、食の事柄は世の中のさまざまな出来事と深く強く関連していることであり、その多くが不公正な出来事として意識されるため、腹立たしいことこの上ありません。

 今年の4月、米・麦・大豆などの重要な穀物の種子を安定的に生産し、普及させることに国が責任を持つことを明記した「種子法」(主要農産物種子法)が廃止されました。前の農水大臣も強く反対し、発言をされているので、関心を持たれた方も多いかもしれません。

 近年の「アメリカ発の不公正を生み出す世界基準ルール」が、社会のあらゆる分野に広がり、人々の暮らしに大きな影響を与えています。その動きがタネにも及びます。タネを支配し、食を支配し、莫大(ばくだい)な利益を得ようともくろむ、悪意ある勢力を勢いづけるものです。

 今までも、野菜のタネは民間に委ねられ、多くはF1種が流通しています。一代限りで、毎年種子会社からタネを買わなければならない、品種の多様性を失い、画一的なものになり、おいしさもいまひとつ、など問題も多いのですが、今回は米など食に不可欠な穀物のタネであり、影響力も桁違いです。無関心ではいられません。

 人はタネを作ることはできません。植物の営みに依存して、人は生きるための糧を得ています。人にとって共有の財産です。人が作り出せない物をあの手この手を駆使して、独占しようといういかなる行為も認めるべきではありません。

 タネは人類の共有財産であるとして、活動した国際的な機関も過去にはありました。凶作時に種の更新が困難な際に、育種し守り続けてきたものを災害国に速やかに供給する機関です。公正な活動でしたが、タネをもうけにせんとする勢力によってつぶされた歴史があります。今はそんな勢力が幅を利かせます。

 遺伝子組み換え、これからはゲノム編集?それが最先端の技術ともてはやされます。しかし、そんな技術が必要なのか!疑うほどに相当怪しく思われます。自身で更新する能力を失った生き物に強い生命力があるはずがないのです。生命力のあるタネを独占し、操作を加え、わざわざ弱いものにして、市場を席巻し、生産から流通までを支配しようというたくらみは人を生かす技術とは思えません。

 私の趣味ですが、毎年米のタネをバケツに播種しています。収穫してもせいぜい茶わん一杯ほどにしかなりませんから、育つのを楽しんでいるだけです。タネを採ってまた来年播種します。バケツ一杯に根を張る米の生命力のすごさに驚きます。収穫頃には鳥もやってきて食べ散らかしていきますが、さまざまな生き物がお互いに依存し合っていのちをつないでいるのだ、と自然界の働きに思いをはせる機会になります。

 実際、植物の活動は、関心を持つほどにそのすごさを実感できます。人のおごりで、種そのものを殺すことにつながるような行為は絶対NO!です。植物の活動なくして人も存在できないのですから。

 (すずき・のぶあき、大阪府豊中市)