澪標 ―みおつくし―

繋ぐって素敵(2)地域を繋ぐ(地域の縦糸を再話から)

祐仙 淳子
井ハラ書房編集長
2018年7月6日

 さまざまな場面で、「地域の活性」という言葉をよく耳にする。人も金も新しい物も集まる都市とは違って、人も金も少ない地域の活性にはどんな事が大切なのだろう。

 私は約20年前に、泉大津という人口7万7千人(今は3千人ほど減少)の市に転居した。この町は小さいながら、高速湾岸線への入り口があり、平安の昔から港として開けている海が広がり、南海線で関空まで一本で繋(つな)がる鉄道が走っている。陸・海・空に利便性を持っている所だ。港湾の埋め立てで年々面積は増えているが、周囲4キロ四方に満たない。

 引っ越して間もないころ、よく自転車で街を探索した。色んな店に入ってみる。すると、どの店にも10月から始まる「だんじり」のカレンダーがあり、熱く語る話はもう次年度の祭りの事。私にとって異色なその様子は強い興味を引いた。この街はだんじり文化に支えられた地域の繋がりが豊かで、秋には海側濱八町と山側十二町連合の計20のだんじりに町中の心が熱くなる。

 この町をもっと知りたいと思ううちに色んな人たちと出会った。そして絵本の読み語りのメンバーにも参加することになり、私はこの町と大きく関わる転機を迎えた。歴史も古く地域の文化も豊かであるこの町を掘り起こして物語にしてみたら、日ごろ接している子どもたちも喜ぶのではないかと思ったのだ。

 早速、神社仏閣や地域古老の方を紹介してもらって聞き取りを始めた時、最初に訪ねた神社の宮司さんに、「もうちょっと早く来たら良かったのに、昔の事をよく知る方が先週亡くなった。急がな、どんどん昔の記憶が無くなっていく」とアドバイスを頂いた。また、地元の喫茶店で取材している時にも、店にいた人たちが集まってきて、「こんな話聞いた」とか「知人を紹介したるわ」と、初めてお会いしたのにどんどん繋がっていって、あっという間に一冊分の本のネタを集めさせて頂けた。おかげで再話集として出版でき、その事が新聞に掲載されると、切り抜きを持って大勢の地元の方が本屋に買いに来られた。1年後、2冊目を続けて出版し、さらに今年から地域ラジオ局・FMいずみおおつ(85・5)で、毎週1話ずつその再話を朗読披露し、ゲストと歴史を掘り下げて対談するという1時間枠を持つことになった。

 昔は祖父母が孫に語った伝承話が、社会構造の変化でいつの間にかぷつんと途絶えてしまった今日この頃である。今や伝統文化の継承を各地域で取り組んではいるが、それらを縦の世代間や地域社会という横の繋がりで、昔は自然と支えていた。ネットで一瞬に世界と繋がれる今、この身近な縦横の繋がりが希薄になっているのは寂しい事だ。世界との繋がりが広がるのと同じく、深堀して地元のルーツを知る事はその街にとって大切だと思う。以前、ラジオ大阪に出演して泉大津の再話について対談した時、MCの方が「泉大津は堺と岸和田という特色ある街の真ん中にあって、まるでドーナツの穴。穴は何もない様に見えるが、穴があるからドーナツなのだ」と言われた。スゴイ発想だと思い、泉大津の可能性を感じた。

 地域の活性にはさまざまな手法があるだろう。しかしその街の心や織りなす歴史を大切にしない活性は考えられない。だから私は今、3冊目「昔むかし泉大津で3(さ)」を取材・執筆中である。

 (ゆうせん・あつこ、大阪府泉大津市)