![]() |
トップ|企画|コラム|連載・特集 |
| トップ > 連載・特集 > 澪標 ―みおつくし― |
|
|
澪標 ―みおつくし― |
|
|
2009/02/27
なんば臭と緑のおっさんそもそも野球との出合いは、一九八〇年代初頭のこと。生まれて初めて観戦(かんせん)した南海ホークスの試合でチームカラーである「緑色」に身も心も感染(かんせん)。選手の活躍もさることながら「豚まん」のおいしそうな臭(にお)い、「近鉄電車で、はよ帰れー」といった下品なヤジ、水島新司作「あぶさん」が不敵な笑みを浮かべるレフトスタンド看板と大阪球場のロケーションすべてがなんともいえぬ「なんば臭」を漂わし好感が持てた。 既に球団は存在しないが、野球を超越した「上方文化」としていまだに「南海ファン」を貫き通している。昨年のシーズン前、福岡ソフトバンクホークスが球団創設七十周年事業として南海ホークスの復刻ユニホームで公式戦に臨むという衝撃的なニュースが飛び込んでくる。記念レプリカユニホームの初回販売は仕事の都合で逃すも、追加販売でなんとしても購入したい。発売当日、とりあえず販売をする南海なんば駅のコンビニへと始発電車で出向くことにした。 店頭では開店二十分前にもかかわらず既に五十メートルにも及ぶ長蛇の列。みんなのお目当ては、三つの味が楽しめるロングセラーの菓子パンではなくその日に限っては「南海ホークスのユニホーム」である。並んでいる人間全員が平均年齢三十歳以上の「おっさん」、過去の選手応援歌を「トゥトゥー」と口ずさむ者やセカンドバッグをバット代わりに素振りする者と改札口を行き交う人たちが首をかしげる奇妙な光景。店舗横に位置するカフェでは、出勤してきた店員たちが開店前に怪訝(けげん)な形相で「ひそひそ話」を始める。 そして時刻は開店を告げる午前六時三十分、店員が自動ドアのスイッチを切り替えた瞬間である。西宮神社で行われる「福男選び」のようにごったがえす入り口。辺り一帯は、おっさん同士が奇声を上げながらユニホームを掴(つか)み合うという地獄絵巻と化す。レジ前ではユニホームを“産婆さん”のように抱きかかえるおっさんたちの姿が…。一仕事終えた、その笑顔は目頭が熱くなるシーンだった。 私も間一髪で購入に成功。「南海ホークス」の存在を知らないであろう高校生と思わしき店員が呆然(ぼうぜん)としながら会計作業を始める。ホークスが福岡に旅立ち二十余年。かつて球場があった「なんば」では、球団移転を惜しみ幻想を追い続ける「緑のおっさん」たちがいまだに見えない何かと戦っている。 (おか・りき 大阪市北区) << 「澪標」トップページへ |
| トップ > 連載・特集 > 澪標 ―みおつくし― | |
|
本ページ内に掲載の記事・写真など一切の無断転載を禁じます。
すべての記事・写真の著作権は(株)ザ・プレス大阪に帰属します。 |