おおさか未来予想図

 多くの外国人観光客(インバウンド)でにぎわった2017年の大阪。18年は国際博覧会(万博)誘致が本格化し、カジノを含む統合型リゾート(IR)や大阪都構想の賛否が問われる。各地で進む再開発やホテル建設の槌音(つちおと)は大阪の福音となるか。大阪で起こる未来への動きから予想図を描く。第1部は「先端技術のまち」をテーマに、ロボットや人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、情報通信技術(ICT)への取り組みを紹介する。

第1部「先端技術のまち」(4)

ICTと教育
2018年1月6日

生徒が教え合う時代へ 作問など創造促す

iPadを駆使し、自分たちが作った問題を解き合う生徒ら=東大阪市の近畿大付属高校

 情報通信技術(ICT)の発展に伴い、教員が知識を伝える教育手法は、生徒自身が教壇に立って教え合うといった学び手主体に転じ得る。生徒が教科の問題を作成したり、授業を主導したりと、大阪府内での胎動には、既存の知識を超え、創造を促そうとする関係者の思いがある。

■「作る」学び

 「自分で問題を作って発表するのはしんどい面もあるが楽しい」。近畿大付属高校(東大阪市)の中田陸さん(17)は成長を実感しているという。

 近大付中・高では、生徒が1人1台iPadを持ち、各教諭が授業運営を試行錯誤。数学では、数人の生徒が1グループとなり、他の生徒向けに問題を作る「作問」形式を日常的に行う教諭もいる。知識伝達は教諭が事前に解説動画を配信。授業で空いた時間を作問の実践に充てる。

 中田さんは過去の入試問題を参考にしたりして作成。「難しい問題を理解しておくと、模試でも対応できるようになった」と振り返る。ICT教育推進室の乾武司室長は「作る段階で学びが深まる」と意義を説く。

■自由度重視

 iPadを活用した環境構築に注力してきた乾室長。運営面では「使い方を生徒に任せ、教員はどれだけ失敗を許容できるかが問われている」と自由度の高さを重視している。

 生徒は、板書は撮影して思考時間を増やしたり、自主判断でアプリを入れたりする。2年の西野茂樹さん(17)は、課題研究の授業で会員制交流サイト(SNS)を活用。「多彩な意見を聞けるのが魅力。客観的な視点を身に付け、発表の力が伸びた」と話す。離れた場所でグループ学習するため、情報共有に使う生徒もいる。

 乾室長は「生徒の発想に驚くケースは多い。既存の知識では対応できない問題を解決できる力を育んでいきたい」と展望を示す。

■問題解決力

 追手門学院大手前中学の授業では、ロボットの構造を学んだり、自律型ロボットのプログラミングを考えたりする時間がある。講師は、教員が打ち合わせをした上で、ロボットに詳しい生徒らに担当させている。

 プログラミング能力などは、生徒のほうが優れているケースもあり、「生徒自身が課題を見つけ、解決への道を切り開いていく」とロボットサイエンス部顧問の福田哲也教頭。2016年度の調べでは、ロボットの授業を受けた生徒の約9割が創造力の向上を実感していたという。

 福田教頭は「目標を達成するために必要な手だてを行う、問題解決能力の育成が重要。社会に出たときに必要だ」と指摘する。

 ICT機器の活用を巡っては、府内の一部公立高校でスマートフォンを使った試みが始まったり、大阪市では全公立小・中に1校当たり基本40台のタブレット端末が整備されている。

 課題を発見し、解決していく力が求められる社会情勢の中、「主体的・対話的で深い学び」が国の教育テーマに掲げられる。子どもが主役の教育をどこまで実現できるのか、大人の覚悟が大阪の未来を左右しそうだ。

 (第1部おわり)

ミニクリップ
 コンピューター1台当たりの児童生徒数 全国の公立学校を対象にした文部科学省の調査(速報値、2017年3月1日現在)では、教育用に利用しているコンピューターは児童生徒数5・9人に1台整備されていた。07年は7・3人に1台だった。大阪の現状は5・2人に1台で、全国で18番目の整備状況。