なにわに生きる 次代につなぐ

 2019年が明けた。平成と新元号をつなぐ節目の年となる。新しい時代をつなぎ、結ぶ年ともいえそうだ。時代が変わろうとする中、次の時代を担う人たちに、何を引き継いでいくのか考える時間でもある。関西地域の中核都市として大阪の発展は欠かせないが、主役はあくまでも大阪に暮らす人たち。本紙では年間企画として「なにわに生きる−次代につなぐ」と題し、今を生きている私たちが次代につなぐものは何かを取り上げる。

第1部「生きる力と教育」(2)

2019年1月4日

児童養護施設 自分を「デザイン」

「子どもデザイン教室」代表の和田さん。「生きる力、技術があれば、困難を乗り越えられる」と活動を続ける=大阪市内

 火を噴くトウガラシ「とんがらりん」に、ウサギの耳を付けた「不思議忍者」。これらは、大阪市東住吉区の「NPO法人子どもデザイン教室」に通う児童養護施設で暮らす子どもが考案し、企業に販売した「こどキャラ」だ。報酬の25%が考案者の将来資金として支払われる仕組みになっている。

■全て受け入れる

 同法人代表の和田隆博さん(58)が教室を設立したのは2007年。試行錯誤しながら、施設で暮らす多くの子どもたちを見守ってきた。

 死別や経済的困窮などで親と一緒に暮らせない子どもは、全国で約4万5千人。児童養護施設の場合は、およそ半数が虐待や育児放棄といった親の問題行動が原因だ。

 「施設の子は自己肯定感が低く、劣等感がある」と和田さん。教室で自由に絵を描かせると、多くの子どもの手が止まる。質問もせず、途中で投げ出す子もいる。それでも、和田さんは彼らの全てを受け入れる。色がいい、形がいいと。「怒られると思っていた」という子どもたちは、多彩なキャラクターを生んだ。

■三つの力

 第一線で活躍するグラフィックデザイナーだった和田さんにとって、デザインとは「世の中に必要とされているものを形にする」こと。それは「創造力」とともに、他者を理解しようとする「対話力」、そして、最後までやり遂げる「努力」の三つが必要だと説く。

 教室では、中学生以上を対象に、自分の考えを論理的に言語化する「デザイン国語研究レッスン」を、大阪府立大・今宮工科高と共同実施。提案と説明、時に妥協しながら相手に思いを伝えるスキルを遊び感覚で身に付ける。「社会的養護の支援が終わった時、自己肯定感や生きる力がないと、へなへなになってしまう」と和田さん。

■人生を切り開く

 「施設の集団ルールで生活していると、自己主張や自己決定する機会がなく、主体性がなくなってしまう」と、府立大の伊藤嘉余子教授(社会福祉学)は指摘する。

 18歳になると原則、施設を退所し、自立が求められる。家族という後ろ盾がない中、進路決定は個人の“生きる力”に委ねられる。

 デザインは机上の論ではなく、人生を切り開くツール。「人生を自分でデザインしていく。自分から学ぼうとする力、相手に関心を持つ好奇心があれば、毎日を少しでも楽しく過ごすことができる」。和田さんの願いは、未来をつなぐ。

 児童養護施設 児童福祉法で定められた児童福祉施設。保護者がいない1歳以上の幼児から原則18歳まで(場合によっては20歳まで延長できる)が入所する。厚生労働省によると、全国に603カ所あり、約2万7千人が入所している(2016年10月)。


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