大阪発 癒やしの温泉巡り

新潟県・出湯温泉 「清廣館」(上)

2017年3月18日

境内に湧く越後最古の湯

昭和3年建築の昭和の面影を色濃く残す「清廣館」の木造3階建建物

 冬期にシベリアからの白鳥の飛来で有名な新潟県の「瓢湖」。その東方にそびえ、五つの峰を持つ五頭山(ごずさん)(標高912メートル)を主峰とする五頭連峰。新潟で屈指の登山者数を誇る人気の山だ。その五頭山の西山麗に湧く出湯・今板・村杉の三つの温泉地が「五頭温泉郷」である。

 弘法大師の開湯と言い伝えられ、1200年以上の歴史がある。泉質は効能高い天然ラジウム温泉。明治から戦前までは主に新潟の人たちの湯治場として利用されてきたが、バブル期には新潟の奥座敷として70〜80人の芸者を抱えるほど繁盛していた。

 バブル期が去ってから時が経過した現在、芸者はおらず、ゆっくり温泉を楽しむ場として新潟のみならず周辺の人たちにも愛用されている。2016年5月に国民保護温泉地に指定。新潟県観光顧客満足度調査では、12年から3回連続で総合満足度1位を獲得している注目のエリアだ。

 その温泉郷の中で最もひなびた雰囲気を残しているのが「出湯温泉」。809(大同4)年にこの地を訪れた弘法大師(空海)が錫杖(しゃくじょう)を地面に突いたところ、温泉が湧き出したとの伝説がある。越後最古の湯は、出湯温泉の華報寺(けほうじ)境内に今も湧き続けている。温泉そのものが今も境内の中に「寺湯」の形として残るのは全国的にも珍しいそうだ。

 出湯の地は、平安時代は京都の九条藤原氏により、鎌倉時代は荘園として、そして江戸時代は幕府の天領として治められ、戦時中は温泉の各宿が陸軍病院としての役割を果たしてきた。効能豊かな肌に優しい出湯の湯の評判は名高く、江戸時代の「諸国温泉効能艦」にも名泉として挙げられている。

 私と家内は、今年1月7日から11日まで4泊5日の行程で旅に出かけた。その旅は、新聞温泉記事の取材も兼ねて、雪の降る地方を各停の鉄道に乗りながら、主に秘湯巡りをする旅だ。1泊目は長野県湯田中温泉に、2泊目は新潟県清津峡温泉に、そして3泊目は新潟県出湯温泉に泊まった。私にとって出湯温泉は、20年ほど前に日帰りで入浴した時以来2度目の訪問である。

 出湯で宿泊した宿は、日本秘湯を守る会の会員の宿である「清廣館」。1707(宝永4)年創業で、既に300年以上の歴史を刻む。建物は、1928(昭和3)年建築の木造3階建ての国登録有形文化財の宿だ。当時の館主が宮大工の棟梁(とうりょう)とともに良質の木材を求めてあちこちを巡って築いた立派な建物である。清廣館の具体的魅力は、次週に紹介する。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

【所在地】新潟県阿賀野市出湯802番地
 【電 話】0250(62)3833
 【部屋数】11室(定員40人)
【宿泊料金】1万1千円〜1万3千円(税別、2人1室)
【定休日】不定休
【日帰り入浴】営業時間午前10時〜午後2時(繁忙期不可、要問い合わせ)
【入浴料金】大人千円、小人500円
【交 通】
・JR羽越本線水原駅下車、阿賀野市営バス約25分(出湯温泉下車)
・磐越自動道安田ICから車で約15分