大阪発 癒やしの温泉巡り

新潟県・出湯温泉 「清廣館」 (下)

2017年3月25日

温かく謙虚、もてなしの心

100%源泉掛け流しの良質のラジウム泉に入浴できる「清廣館」のレトロな木製の浴場

 私と家内が今年1月12日に初めて泊まった出湯温泉「清廣館」は、ほっと落ち着く良心的な宿である。

 宿の人たちの宿屋経営者としての思いを紹介する。

 「日本秘湯を守る会の宿として、こんな遠くまで足を運んでくださる皆さまの笑顔に出会えることに、何よりのうれしさと喜びを感じます。私たちの心に笑顔をくださるように、皆さまの心の片隅に残るような宿でありたいと思います」。

 このように客を温かく、かつ謙虚に迎えるもてなしの心が、何度もここに足を運ぶリピーターをつくり出しているのであろう。

 この宿には、主に五つの魅力がある。まず一つ目は、全てのお客と対等に接し、温かくもてなす真心の宿であること。戦時中は陸軍病院の分院の一つとして「靜山寮(せいざんりょう)」という名で、温泉で負傷した兵隊たちが傷を癒やしてもらう大きな役割を担った。その名の看板は現存しロビーに展示されている。

 二つ目は、国登録有形文化財に登録され、歴史を刻んできた木造3階建ての建物が素晴らしいこと。幾年も新潟の冬の風雪に耐えた重厚でレトロな外観のみならず、宮大工が腕を競い合いながら丹精込めて作り上げた厚手のケヤキ一枚板の床の間、凝ったデザインの書院、高い天井、そして本枠囲みの揺らぐ透明ガラス戸などの建物内部も私たち旅人に落ち着きの空間を提供する。

 三つ目は、源泉名が「出湯温泉洞春の窟」と称される温泉が、自噴で100%源泉掛け流しの地下から生まれたての良質の湯であること。泉質は単純弱放射能泉、泉温は30・6度(浴用は適温に加温)、湧出量毎分31リットル、PH値6・8。透明度の高い柔らかな肌に優しいお湯だ。浴用は神経痛・アトピー・美肌、飲用は胃腸病などに効能あり。浴湯は、大小のレトロな雰囲気をかもし出す二つの風呂がある。

 四つ目は、自然豊かな風土に育まれた山菜・キノコ・自家製野菜・川魚など地の旬の食材を使ったヘルシーでおいしい料理を食することができること。調理を担当するのは、女将(おかみ)と若女将などの女性たち。私が行った日にいただいたのは、イワナの塩焼、キノコなどの寄せ鍋、自家製コンニャクなどの全て手作りの心と体に優しいおふくろの味であった。

 五つ目は、館内全ての掃除と整頓が行き届き、清潔感にあふれていること。また宿の周辺には瓢湖、五頭温泉郷の他の温泉、五頭山登山など見どころが多い。若女将の清野典子さんは「木造3階建ての建物は、ぜひこのまま残していきたいです。そしてお客さまの心の片隅に残るような宿でありたいと願っています」と優しくかつ謙虚に語る。遠い関西からでもぜひ数年に一度は訪ねたい出色の宿といえる。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

【所在地】新潟県阿賀野市出湯802番地
【電 話】0250(62)3833
【部屋数】11室(定員40人)
【宿泊料金】1万1千円〜1万3千円(税別、2人1室)
【定休日】不定休
【日帰り入浴】営業時間午前10時〜午後2時(繁忙期不可、要問い合わせ)
【入浴料金】大人千円、小人500円
【交 通】
・JR羽越本線水原駅下車、阿賀野市営バス約25分(出湯温泉下車)
・磐越自動道安田ICから車で約15分