大阪発 癒やしの温泉巡り

長野市松代町 加賀井温泉 一陽館

2017年6月3日

レトロな秘湯の雰囲気

自噴の大量の湯が流れ込む真っ茶色で濃い成分の「加賀井温泉露天風呂」

 江戸時代の面影が今に残る歴史の町、長野市松代町。真田十万石の城下町として栄えたこの町にあるのが、効能豊かな「黄金湯」と称され、レトロな秘湯の雰囲気を醸し出す個性派温泉の「加賀井温泉」だ。私は2004年に知人の結婚式に出席するため松代町を訪れた際に初めて入浴した。以後「街中の秘湯」と言うべきこの温泉を再び訪れる機会に恵まれなかった。しかし今年4月、家内と一緒に上田城で満開の桜を見た翌日の16日昼間に、13年ぶりに訪れることとなった。

 同日朝に上田駅から屋代駅まで、しなの電鉄に乗り、屋代駅からはバスで松代へ向かった。鉄道やバスの車中から至る所で、きれいに咲き誇る満開の桜を見ることができた。「一陽館」は、桜・梅・ツツジなどが咲く約3千坪の広さの森林庭園の中に位置する。敷地の中に入ると左右に古い建物が現れる。

 加賀井温泉の歴史は、江戸時代の1766(明和3)年、村人が田んぼの中に温かなお湯が出ているのを見つけ、湯小屋を建てたいと松代藩に願い出たことから始まるといわれる。また一陽館の歴史は、鉱山業を営んでいた初代が1930(昭和5)年に加賀井温泉の一軒家の温泉旅館として創業したことに始まる。

 今から15年ほど前に旅館業は休業し、それ以降日帰り温泉のみの営業を続けている。今は、元東京水産大(現海洋大)名誉教授の3代目代表・春日功氏がこの宿を切り盛りする。温泉のことにかけてはたいへんな知識人で、昔かたぎの気骨のある人物である。

 この温泉の自慢は、何といっても温泉の成分が濃く、効能の高い湯であること。泉質は、含鉄(II)−ナトリウム・カルシウム−塩化物温泉(中性・高張性・温泉)で、温泉に含まれる炭酸ガスの圧力による自噴の温泉だ。内風呂に使用する3号泉は、泉温41・5度、毎分湧出量実に700リットル。露天風呂に使用する1号泉は、泉温38・5度、毎分湧出量200リットルを誇る。内湯は、縦7メートル横2メートルの昔ながらのレトロな共同浴場の雰囲気で、浴室と脱衣所が一緒になっている。

 そして松代地震でよみがえった1号泉からは真っ茶色の温めの湯が露天風呂に流れ込む。二つの浴槽が並ぶ露天風呂(混浴)に入るには、内湯の建物の入り口から裸のまま出て、露天風呂へ向かうユニークなもの。神経痛・リウマチ・身体各部の痛み・皮膚病・アトピーなどに特に効能あり。

 加賀井温泉一陽館は、濃い温泉、レトロな建物、反骨精神旺盛なご主人など全てにおいて型破りな、ぜひ一度は訪ねてみたい温泉である。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

●温泉のプロフィル●
【所在地】長野市松代町東条55
【電 話】026(278)2016
【日帰り入浴】営業時間午前7時半〜午後7時45分
【入浴料金】大人400円、 小人150円
【休憩付入浴】営業時間午前8時〜午後4時、料金750円(お茶付き)、ただし半日は550円
【定休日】無休
【交 通】
 ・JR長野駅→(バス27分)松代中町→(徒歩17分)加賀井温泉
 ・しなの鉄道屋代駅→(バス30分)松代温泉入口→(徒歩11分)加賀井温泉