大阪発 癒やしの温泉巡り

岐阜県下呂市 濁河温泉「朝日荘」 《上》

2017年8月5日

日本一高所に湧く秘湯

2013年新しく和モダンの粋な宿に生まれ変わった朝日荘の建物

 日本百名山の霊峰「御岳山」(標高3067メートル)の雄大な姿を間近に望む秘境の地に湧く山中の温泉「濁河(にこごり)温泉」。標高1800メートルに位置し、夏でもエアコン不要の涼しさである。通年営業で温泉街のある温泉地としては、日本一高所に湧く温泉として知られ、古来御岳山の登山者に親しまれてきた。周りは、御岳山北西側の広大な裾野で、原生林が生い茂る静かな大自然に囲まれる。最も近い民家から車で約30分もかかる秘境ムード漂う温泉地だ。

 この温泉は、江戸時代の中期、霊峰御岳山を目指す修験者によって発見されたと言い伝えられる。明治になると、御岳山登山者のための簡素な温泉山小屋が建てられた。まさに御岳山への登山者とともに歴史を刻んできた温泉と言える。戦後の高度成長期からバブル期にかけては登山者のほかに一般客も訪れるようになり、最盛期には8軒の宿と4軒の保養所とでにぎわった。平成になってからは、登山客の姿は徐々に減少し、今は7軒の宿だけとなり、昔の静かな秘境感のある温泉地の姿を取り戻している。

 「濁河」という名称は、この温泉地の草木谷と湯の谷の流れが合流する地点で水が混ざり合って白くなることから付いたといわれる。湯の谷は、温泉湧出の地でもあって、川水が白濁するのも流れ込んだ温泉成分と関係しているようだ。

 私は、約40年にわたって温泉巡りの旅を続けているが、特に自然と自分とが正面から向き合える秘湯が好きである。今から25年以上も前、木曽の山中の秘境を求めて、友人の運転する車で関西からこの濁河温泉を訪れたことがある。ここまでの道のりは細くカーブの多い山道で、友人が苦労して運転していたのがまるで昨日のことのように思い出される。その時泊まった宿は、旅館御岳であった。

 その秘湯巡りの旅から25年以上も経過した今年の7月18日、奥飛騨温泉郷の人気宿「槍見館」の林英一社長の運転する車に同乗させてもらい再び濁河温泉を訪れた。初めて訪れた時に比べて、すっかり静かで落ち着いた温泉地の姿に変わっていた。

 今回私が宿泊したのは、日本秘湯を守る会会員の宿「朝日荘」である。1970(昭和45)年の創業で、今は3代目松坂靖さん(41)が中心となってこの宿を切り盛りする。「仙境の地で非日常の心の癒やしを求める宿」と言える。この宿の種々の魅力は次週に紹介する。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

【所在地】岐阜県下呂市小坂町落合2383
【電 話】0576(62)3528
【部屋数】和室12室(定員45人)
【宿泊料金】(2人1室1泊2食付き)1万6千円〜(税・入湯税別)、飛騨牛料理付1万8千円〜(同)
【日帰り入浴】営業時間午後2時〜同6時(要確認)
【入浴料金】大人800円、小人500円
【交 通】
・JR高山駅→(14:10分発、バス約90分)濁河温泉(宿へ要予約)
・中部縦貫道高山IC→(車で約80分)宿