大阪発 癒やしの温泉巡り

福岡県・二日市温泉 「大丸別荘」 (上)

2017年10月7日

歴史を刻む老舗旅館

私ら夫婦が泊った庭園が一望できる純和風の大正亭雲井の間

 福岡県内の太宰府に近く、博多の奥座敷といわれる二日市温泉。ここの発見縁起は古い。7世紀初めの孝徳天皇の時代、当地に藤原登麻呂という人がいて、その子(姫)が疫病で命危うし折、天拝山麓(武蔵寺)の薬師如来におすがりしたところ、「東方に温泉があり、そこに浴すれば必ず病気は治るであろう」とのお告げがあった。翌朝そのお告げの通り、東方に温泉が発見され、姫の病気はたちまち全快したとの伝説がある。

 それ以来、太宰府につかわされる宮廷人もこの湯に漬かり、太宰府政庁の元帥(長官)であった大伴旅人(家持の父)は、当地で最愛の妻を亡くし、悲しみの内に「湯の原に 鳴く芦田鶴は 吾がごとく 妹に恋ふれや 時わかず鳴く」と『万葉集』に詠んでいる。

 近世には黒田藩の湯治場として栄え、幕末には三篠実美、坂本龍馬らが倒幕の策を練る舞台にもなった。明治以降は、夏目漱石もこの温泉で遊び、「湯のまちや 舞ると見えて さんざめく」との一句を詠んでいる。石炭産業で栄えた時代には、博多の奥座敷として大いににぎわった。その産業が衰退した以降は落ち着きを取り戻し、福岡県を代表する街中の温泉地として愛され続けている。

 私は1988年4月30日に日本百名山全山登頂を約14年半の期間で終えた。その後は日本の温泉千湯入湯を目標に、日本各地の温泉を頻繁に巡っており、今から約30年前に二日市温泉を訪ねている。

 私と家内は、7月23日、約30年ぶりに再訪し、その日に泊まった宿は、この温泉地で歴史を刻む老舗旅館「大丸別荘」である。

 前日の22日夜は、親しくしている新聞社編集局長に福岡市内で絶品の鶏の水炊きなど博多のおいしい名物料理の数々をごちそうになった。翌23日は午前中に直近の台風による豪雨により甚大な被害を受けた同県朝倉市の被災地を新聞社副センター長の案内で回った。いつも思うことではあるが、天災による被害の怖さを実感させられる数々の光景であった。亡くなられた方々に心から冥福を祈りたい。

 その日は、福岡県の小京都といわれる秋月の山間部にある滝が見える川床料理店「だんごあん」で昼食。ヤマメの塩焼きや地鶏の焼き鳥、流しソーメン、名物だんごなどを天然クーラーの中でおいしくいただいた。その日の晩に泊まった宿が、副センター長が推薦してくれた大丸別荘である。副センター長の配慮もあり、私が家内と泊まった部屋は、昭和天皇が49年の九州初御巡幸の折に宿泊された大丸別荘大正亭2階の「雲井の間」であった。幸運と言うほかはない。大丸別荘の魅力は次週に紹介する。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

●温泉のプロフィル●
【所在地】福岡県筑紫野市湯町1丁目20の1、二日市温泉
【電 話】092(924)3939
【宿泊料金】平安亭(新館)2万1534円(税・サービス料込み)〜、大正亭(木造)2万6286円(税・サービス料込み)〜、昭和亭(小部屋)1万9158円(税・サービス料込み)〜、いずれも1泊2食、2人1室の場合
【日帰り入浴】なし※ただし日帰り入浴付き食事プランはあり
【定休日】不定休
【交 通】
・博多駅→(JR15分)二日市駅→(タクシー約5分)宿
・福岡空港→(高速バス約25分)筑紫野バス停→(徒歩約5分)宿