大阪発 癒やしの温泉巡り

新潟県・五頭温泉郷今板温泉 「湯本舘」 (上)

2017年11月11日

湯治場の趣、今に残す

森のにおいに包まれる今板温泉の一軒宿「湯本舘」建物

 新潟市の東方にあり、五つの峰を持つ五頭山。その山懐にある出湯、村杉、今板の三つの温泉地を五頭温泉郷と称する。日本の原風景が残り、美しい自然と豊富な名水の里は、湯治場の趣を今に残す静かな隠れ湯として、また、旬の食材豊かなおいしい味覚の里として知られる温泉郷だ。

 その中の出湯温泉は、開湯から1200年を過ぎ、新潟県最古の歴史を誇る。809年に弘法大師が錫杖(しゃくじょう)をついて薬湯を湧出させたとの伝説が今に残る。時が流れ、明治の終わり頃になって、地元の人たちがこの薬湯を利用して温泉街を作った。

 出湯温泉の南方にある「今板温泉」は、500年以上昔から自噴温泉井戸として存在していたが宿はなかった。明治の終わり頃から大正の初めにかけて、農業から旅館業に転身した人たちが次々と7軒の旅館と2軒の料理屋を開業した。温泉街の中心には今板温泉共同浴場も設置され、旅館の人たちが当番制で浴場を管理してきた。

 「湯本舘」は1912(大正元)年に創業。初代が土地や畑を売り払いさらに借金をして、今板温泉の一番奥まった現在地に建物を建て旅館業を始めた。旅館名は、温泉井戸が宿の敷地内にあったことから名付けたという。その後、昭和の世界恐慌の折には周辺の宿も倒産や廃業が相次ぎ、今は湯本舘だけが今板温泉の「一軒宿」としてがんばっている。

 湯本舘は、14室の小さな宿であるが、若女将永松(旧姓・大堀)祥子さん(33)を中心に、お客さまに寄り添う個性的な小宿として温泉好きに人気を集めている。私は今年9月8〜10の3日間、副会長を務めている温泉学会「新潟・五頭温泉郷大会」の出席も兼ねて同温泉郷を訪れた。村杉温泉と出湯温泉は、泊まりがけで何度も訪れているが、今板温泉は訪ねたことがなかった。

 今回、念願かない同大会の終了した10日午前に湯本舘に立ち寄った。残念ながら宿泊なしの日帰り入浴だけであったが、若女将(おかみ)や女将から心のこもったおもてなしを受けることができた。この宿はいろいろなアイデアでお客さまに心から寄り添い、お客さま一人一人に満足を与える素晴らしい宿であることを知った。湯本舘の種々の魅力は次週に紹介する。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

【所在地】新潟県阿賀野市今板795の2
【電 話】0250(66)2321
【部屋数】和室14室(定員65人)
【宿泊料金】板長おまかせ月替会席プラン=1万2千円、刺身とカニ日本海会席プラン=1万5千円、越後牛ステーキ会席プラン=1万4千円、地産地消阿賀野会席プラン=1万6千円(いずれも2人1室、消費税・入湯税150円別料金)、休前日はいずれも3千円+消費税が加算
【日帰り入浴】営業時間=午前10時半〜午後9時(最終受け付け午後8時半)
【入浴料金】大人700円、小人400円
【定休日】不定休
【交 通】
・JR新潟駅(南口)→(宿の無料送迎で約50分・要予約)宿
・北陸道新潟西IC→(車で約20分)磐越道安田IC→(車で約15分)宿