大阪発 癒やしの温泉巡り

宮城県石巻市 「峠の湯 追分温泉」(下)

2018年2月24日

落ち着きのカヤ材浴場

カヤの木で張り詰めた落ち着きの空間「追分温泉浴場」
私を感激させた三陸の海の幸が目一杯並んだお造りの数々

 昔、横山宗雄という人物が金の鉱脈を探していた。金採掘は廃業したが、坑道から流れる小さな川に目がいった。この水を沸かして地元の人たちの湯治場としたのが「追分温泉の始まり」と言い伝えられる「追分温泉伝説」が残る。山深い雑木林の中の一軒宿の自慢は主に二つ。最高級のカヤ材の浴場と三陸の海から揚がる新鮮な魚介類をメインとした豪華な食事だ。

 創業は1948(昭和23)年。今は3代目ご主人で、板長も兼ねる横山宗一さん(61)が、しっかり者の女将(おかみ)とともにこの宿を切り盛りする。大の温泉好きのご主人が樹齢500年のカヤの木で造った男女別の浴場。浴槽・壁面・天井・窓枠などに木をふんだんに使っており、どこか懐かしさが感じられる落ち着きの空間である。俗世界の喧騒(けんそう)を忘れ、ゆっくりと静かに湯に漬かることができる。浴場へと続くレトロな長い廊下を歩いて行くのも楽しい。

 次の魅力は、ずばり海と山の幸をふんだんに使ったおいしい料理を味わえること。山の自然と三陸の好漁場に近いこともあって、地の新鮮な食材が並ぶ。おかずだけでも実に12種の料理が所狭しと並んだ。私の好物の造りは、ヒラメ・マグロ・甘エビ・ホタテ・ウニ・アワビ・サンマ・蒸しホヤ・つぶ・生ズワイガニのおいしい鮮魚のオンパレード。遠方からの客ということで、天然ウナギの白焼き、カキのみそ焼き、三陸産水鯛(ダイ)の汁物をサービスの一品に加えていただいたのもうれしい限りであった。

 石巻市山中の郷愁の中にもぬくもりを感じられる、人家から離れた一軒宿「追分温泉」。来年秋にボランティアで東北被災地を訪れる際にも、ぜひ泊まってみたい魅力いっぱいの宿であった。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

●温泉のプロフィル●
【所在地】宮城県石巻市北上町女川字大峯1
【電 話】0225(67)3209
【部屋数】和室35室(定員80人)
【宿泊料金】平日(税込み)6156円〜(1泊2食、冬期は別途暖房費必要)
【日帰り入浴】営業時間 午前10時〜午後7時
【入浴料金】大人300円、小人150円
【定休日】12月30日・31日
【交 通】
・JR石巻駅→宿(送迎バスあり・要予約)
・三陸自動車道河北ICから国道45号線経由、車で約30分