相羽秋夫のお笑い食べまくり

上方落語 「無い物買い」

2016年11月26日

創作メニュー10種に人気

飛び切りの笑顔で接客する柏木利江子女将

 店に無い物ばかりを注文して困らせてやろうと相談した悪友2人が、まず金物屋を訪れる。「引き出しと蓋(ふた)のある金盥(かなだらい)はないか」とやってたじろがせる。次に古着屋に移動し「足が出ない股引(ももひき)をくれ」と難題を出す。こんな調子で饅頭(まんじゅう)屋、味噌(みそ)屋、魚屋を困惑させる。上方落語「無い物(もん)買い」である。

 今回は、“有(あ)る物(もん)”の食材でお客を持(も)て成(な)す奇特な店のご紹介である。大阪ミナミにある楽呑(らくの)み処(どころ)「ALM(あるも)ON(ん)」だ。

 Aで始まりNで終わる店名は、文字の始めのア、最後のン、つまり“阿吽(あうん)”の呼吸でお客に接したいという柏木利江子女将(おかみ)の願いが込められている。

 その女将、大阪音楽大学でオーボエ奏者として注目され、卒業後は一流ホテルの営業を担当して、2年前に店を出した変わり種だ。だから「お客さまも、自称“変わりもん”が多いんですよ」と“類は友を呼ぶ”を強調する。鉄道の枕木をひたすら勘定して博士号を取得した客、音大の入試を落ちたが医大に合格して医者になった人、茨城県は“イバラキ”と読むのだと異常にこだわる女性など、枚挙にいとまがない。

 “有る物”で作ったメニューは、日替わりで10種ほどある(300円から600円、全て税別)。その日のメニューは、LINEやフェイスブックで伝えられる。週替わりの「土曜日のコロッケ」や、ホテル時代の先輩シェフが仕込んでくれる「パパカレー」、それに「十割そば」「明太子(めんたいこ)スパゲティ」などが好評だ。「生ビール」中ジョッキ380円、「焼酎」90ミリリットル300円から、「日本酒」180ミリリットル380円からと安い。

 女将提唱で2、3カ月に1度開く「遠足」は、京阪神の名所旧跡を巡り、呑(の)み会で打ち上げる。“ALMON”の“変わりもん”による“ホルモン”注入の旅だ。

(演芸評論家)
楽呑み処「ALMON」

大阪市中央区千日前1の6の10
千寿ビル新館地下1階
070(5346)5756
午後5時〜午前0時
日曜(月2回)休、予約可