相羽秋夫のお笑い食べまくり

上方落語「軒付け」

活うなぎ専門「澁谷商店」
大阪市東成区東小橋3の10の29
06(6971)1119
午前7時半〜午後4時
日祝日休み、予約可
2017年1月21日

70年近く続く持ち帰り鰻専門店

70年の老舗「澁谷商店」店頭

 浄瑠璃を習い始めた男たちが、修行のため人家の門口に立って語る“軒付け”を思い立つ。伴奏者に、これまた三味線の未熟な男を、「鰻(うなぎ)の茶漬けを食わしたる」と約束して同行させる。しかし散々(さんざん)な出来栄えで、男たちは住民から叱責を受け怯(ひる)むも、三味線の男だけは、鰻食べたさにがんばる。上方落語「軒付け」である。

 JR大阪環状線鶴橋駅から徒歩5分の所に、戦後間もない1948(昭和23)年から、鰻の持ち帰り専門の「澁谷(しぶたに)商店」がある。

 当代の3代目店主澁谷慶和(よしかず)さんと久美夫人が伝統のともしびを守る。初代は小学校の先生だった変わり種だ。当初から日本一美味だといわれる鰻の養殖地、愛知県三河一色から直送したものを使っている。腹開きの大阪焼きだが、カリッと焼き上げてから、秘伝のタレを付けるのが特徴で、癖(くせ)のない味が喜ばれている。この「かば焼(やき)」は、日によって仕入れ価格が変動するので、焼き上がったグラム数で計算しているが、だいたい1尾2千円(全て税込み)見当である。要予約で、「かば焼」と同じ値段で「白焼」も提供できる。

 山形県産のこしひかりを、タレにからみやすいように少し柔らかめに炊いたご飯の上に乗せる「鰻弁当」は、特上が2150円、上が1550円、それに並が1200円だ。どれもたっぷりと鰻が乗っている。注文してから2〜3分で調理してくれるので、ぬくぬくの弁当を食べることができる。

 他にも、牛蒡(ごぼう)に鰻を巻く「八幡巻(まき)」が1100円、「うなぎ肝焼き」が1パック300円。豆腐と一緒に炊くとおいしい鰻の頭(半助と言う)は無料なので、申し出るとよい。6月頃から出荷される、成魚になったばかりの“新仔(しんこ)”と呼ばれる鰻を好むお客も多い。

 この店にはないが短冊状に切った白焼を山葵(わさび)と一緒にご飯に乗せ、日本茶を注ぐ“鰻の茶漬け”は、浄瑠璃を唸(うな)る以上のおいしさで、くだんの男も唸ることだろう。

(演芸評論家)