相羽秋夫のお笑い食べまくり

上方落語 「市助酒」

2017年4月8日

酒店で飲酒コーナー

笑顔が魅力の松井店主

 厳寒の夜、町内を「火の用心!」と声を張り上げて回る役の市助という男がいる。どの家も「ご苦労さん」と、声を掛けてその労に報いる。しかしある店の番頭だけは、奉公人を怒っている最中だったのでつい「うるさい!」と怒鳴る。主人にとがめられた番頭は次の夜、酒好きの市助に酒を振る舞ってわびる。故六代目笑福亭松鶴の十八番(おはこ)の一つ「市助酒」だ。

 本当の酒好きは、酒店の店頭で嗜(たしな)むことを本分とする。大正時代から90年以上も続く和洋酒販売「松井商店」の3代目店主松井義行さんが、店の半分を使って始めた飲食コーナーは、立ち呑(の)みも可能だが、椅子(いす)が用意されていて居酒屋のような様相を呈している。

 酒の肴(さかな)は、乾き物や缶詰のみの店が多いが、ここは店主の息子さんの奥さんが、毎日心を込めて料理する。常時提供しているのが「おでん」で100円(全て税込み)から150円まで10種類ほど出来る。中でも“豆腐”(130円)は評判が高い。さらに、日替わりメニュー10種類(150〜250円)が用意されていて、紅しょうがの天ぷらのような大阪らしい献立が好まれている。客の中には、「天ぷらにおでんの出汁(だし)をかけると最高においしい」と独自の食べ方を考案する人もいる。

 酒類は、ビール大瓶と生中ジョッキが400円、焼酎300円、日本酒(200ミリリットル)280円、ウイスキーハイボール260円と、これまた安価だ。だから、1500円ほどの予算で2時間も粘るお客が多いという、天国のような店である。

 松井さんは、東成区のソフトボールチーム「玉津シルバー」の監督で、試合後はチームメート全員が、この店で千円の会費で飲み放題の打ち上げ会を開く。この時ばかりは、筆者もチームの一員に加わりたい。

(演芸評論家)
和洋酒販売・居酒屋 「松井酒店」
 大阪市東成区中道4の17の16 06(6971)8950 午後4時〜同8時(酒販売は午前9時〜午後9時) 日祝休