相羽秋夫のお笑い食べまくり

上方落語 「鹿鍋」

しゃぶしゃぶ・すき焼専門店「しゃぶ長」
大阪市中央区東心斎橋1の15の25リッツビル1階
06(6244)1678
午前11時半〜午後2時(ランチは土祝休)と同5時半〜同11時半
日曜休 夜のみ予約可
2017年9月16日

「しゃぶ・すき」コースのみ

人気ナンバー1の「しゃぶしゃぶ月コース」

 牛や猪(いのしし)など獣肉を食べることを嫌った時代。鹿肉だけは“鹿(ろく)”と呼んで食べた。ある男、獣肉を食べたいが、鍋に臭いが残ると世間に知れるので、「鹿を食べる」と隣人をだまして鍋を借りる。煮込み中に強烈な臭いが出たので、隣人に「新品を買って返す」と謝ると「大丈夫や。貸したんは膠(にかわ)鍋や」。食肉文化の盛んな現代では、理解不能な「鹿(ろく)鍋」という珍作。

 大阪のミナミに数あるしゃぶしゃぶ専門店の草分けで“一人鍋”を最初に導入したのが「しゃぶ長(ちょう)」である。この世界の長(おさ)である、という矜持(きょうじ)が伝わってくる店名だ。この道50年の田伐(たぎり)健オーナーシェフが40年前に開店。息子の宏次(ひろつぐ)さんが2代目を継いでいる。

 16のカウンター席の前には、ずらりと小鍋が並んで壮観である。メニューは、厳選黒毛和牛の「月コース」(6千円、全て税別)、黒毛和牛の「太陽コース」(4500円)、厳選豚肉の「星コース」(3800円)の3コースのみだ。いずれもメインの肉と野菜、それにご飯またはうどん、香の物、デザートが付く。仕上げには、上質の肉を使用しているためアクが少ないので、塩味の雑炊がお勧めである。

 酸味を抑えた“ポン酢”と、手擦れのゴマに秘伝の20種近い調味料を加える「胡麻(ごま)だれ」のどちらかを付けて食べる。共に自家製。ポン酢は野菜、胡麻だれは肉に付ける方が、それぞれの味の特性が引き立つ。しかし、あくまで本人次第だ。

 酒類は、「生ビール中ジョッキ」500円、「余市のハイボール」700円、それに奈良県産の「千代乃松の凍結酒」600円が料理と相性が良い。「豚しゃぶ定食」(千円、ランチのみ税込み)と「すき焼(やき)定食」(1100円)のランチは、ご飯のお代わりが自由である。「肉をもっと分厚く切れ」との客の注文に応えると、口にして「やっぱり美味(おい)しくない」と頭を下げた。肉の厚みは、シェフの究極の技だ。「肉切りの田伐」は不滅である。

(演芸評論家)