来阪catch

三島原作を現代に

2017年5月14日
「今の時代を反映させたかった」と話す吉田大八=大阪・堂島のGAGA関西支社
「美しい星」のリリー・フランキー(C)2017「美しい星」製作委員会

 「桐島、部活やめるってよ」「紙の月」などで知られる吉田大八監督(52)の新作「美しい星」(GAGA配給)が26日から、TOHOシネマズ梅田・同なんばで公開される。三島由紀夫のSF異色作の映画化で「三島原作を現代に移し、長年の宿題がやれた」という吉田監督に話を聞いた。

 普通の地球人家族がある日突然「自分は宇宙人だ」と気付いて「地球を救わなければ」と動き始める。1962年に書かれた文豪・三島の原作は異色作というだけでなく、SF界から非難の声が上がったという伝説が残っているが、三島は自作の中で「最も好きな作品で愛着がある」と語っている。

 「大学生のころ原作を読んだ。それまで思っていた三島文学とイメージが違ったので驚いたが、自主映画を撮っていたころだったので、将来映画にしたいと思った。学校を出てCM界に入ってもずっと思い続けていた。ようやく2年前に自分で脚本を書いて映画化にこぎつけ、長年の宿題をやるようだった」

 気象予報士の中年男、大杉重一郎(リリー・フランキー)が火星人で、長男の一雄(亀梨和也)が水星人、長女の暁子(橋本愛)が金星人、妻の伊余子(中島朋子)だけが地球人だと思っている。「原作は伊余子も宇宙人だが、彼女をほかの3人と対比することで話をリアルにしたかった。宇宙人の3人は何から地球を守りたかったのか。その辺も現代的にやろうと思った」

 普通の人間が宇宙人であることに覚醒するのはとっぴではある。「自分は地球人として生きているが、その資格があるのだろうかと思う。もっと広い目線を持つべきで、それは宇宙人になることが一番いい。笑いの要素もあるが、地球温暖化の問題はシリアスなテーマでもあるし、同年代のリリー・フランキーさんが演じた役に僕自身を重ねられた」

 原作には地球の滅亡を狙う宇宙人が3人出てくるが、映画では佐々木蔵之介が演じる黒木という政治家参謀の男に集約している。黒木と家族の宇宙人との戦いは後半で描かれている。「原作にある三島さんの戦いをそこに重ね、リリーさんらが佐々木さんと言葉をぶつけ合っていい展開を繰り広げてくれた」

 キャスティングもいい。「リリーさんは僕より年上だと思ったが同じ年齢で、ユーモアがあって主人公にはまっていた。亀梨さんは昔のジュリー(沢田研二)のイメージがあって怒りを秘めた感じがよかった。橋本さんは美しい人で、処女懐胎するのが神秘的であるし、宇宙人の交信のポーズも美しい。中島さんは地球人で今の時代のにおいを持っている」

 原作から50年が過ぎ、吉田監督が初読してから30年がたつ。「当初考えていた映画とは全く違うものになったかもしれないが、それがうれしい。ただ気になるのは三島さんが生きていてこの映画を見たら何とおっしゃるか。怒られる気はしないが、映画を見た後、僕の顔を見てニヤッと笑って何も言わずに帰って行かれるような気がする」