来阪catch

祖母の時代を生きて

映画「いつまた、君と〜何日君再来〜」
主演 向井 理 尾野真千子
2017年6月25日

夫婦っていいもの

「あの時代を普通に生きた家族の話」と話す向井理(左)と尾野真千子=大阪市内のホテル
(C)2017「いつまた、君と〜何日君再来〜」製作委員会

 俳優の向井理(35)が企画・主演して祖母の手記を映画化した「いつまた、君と〜何日君再来(ホーリンジュンザイライ)〜」(ショウゲート配給、深川栄洋監督)がTOHOシネマズ梅田・同なんばで上映されている。奥さん役を演じた尾野真千子(35)と向井の主演コンビに映画で生きた「昭和の時代」について聞いた。

 祖母、芦村朋子が自分の半生をつづった「何日君再来」という手記を、大学時代に向井がパソコンで打ち直して自費出版で本にした。「祖父母がいたから、今の自分がいるということを強く思った。今の時代の若い人もみんなそれぞれ同じようなプロセスがあると思う。この映画を見て自分の家族や先祖のことを考えるキッカケになればという7年越しの企画だった」

 朋子を演じた尾野は「向井さんと共演はあったが今回は夫婦の役で、それだけでやりたいと思った(笑)。朋子は昭和の時代を苦労して生きた女性。夫の吾郎は不幸なことが続いたけれど、彼女はいつも笑顔を絶やさず家族を励ました。とてもすてきな日本の『おかあちゃん』で、とても楽しく演じられた」と振り返る。

 2人は1940年に初めて出会い、結婚して仕事先の中国の南京に渡り暮らす。3人の子どもに恵まれるが敗戦で日本に引き揚げ、朋子の両親がいる愛媛に戻るも吾郎がなじめず、茨城県・恋瀬村、福島県・棚倉、そして大阪などを転々として生活する。「みんなが貧しい時代だけれど、家族は一生懸命生きた。僕はおばあちゃんっ子で、晩年は一緒に住んでいたが、尾野さんの芝居を見ていて『似ている』と何度もため息が出た」

 尾野は「撮影中に向井さんが朋子さんのことをいろいろ話してくださって、演技の参考になったし、とても背中が大きい人だと思った」という。「向井さんの家庭のことを知る楽しさもあって、あの時代を想像し考えながら演じることが面白かった。夫婦って大変だけど、辛(つら)いことを辛いと思わない朋子さんが素晴らしい」とほほ笑む。

 それでも一度、吾郎が子どもをしかって落ち込み朋子に「別れよう」と言い出すシーンがある。そのとき場面は大きな草原に移って朋子が「別れたくない」と肩から声をかけると、吾郎が野バラを一片摘んで朋子に渡す。「深川監督がとてもいい場面を作ってくださった。夫婦っていいものだとつくづく思った」と尾野が言えば、「祖父は貧乏でも、信念を貫き、そして祖母に支えられた」と向井がうなずく。

 映画は現代の時代を用意しており、晩年の朋子(野際陽子)と一緒に向井自身にあたる孫の理(成田偉心)も登場し、その母親の真美(岸本加世子)らが昔を振り返る。

 81歳で亡くなった野際はこれが映画の遺作になってしまった。脚本は向井が出演したNHKテレビ「ゲゲゲの女房」の山本むつみ。主題歌「何日君再来」を高畑充希が歌って話題を提供している。