来阪catch

幸せの祈りを求めて

映画「いぬむこいり」
監督 片嶋 一貴
2017年7月23日

パンクな幻想世界へ

「人はどこかでユートピアを信じ、新しい再生の夜明けを切望している。常識を覆すことからしか新しいものは生まれない」と話す片嶋一貴監督=大阪・十三の第七藝術劇場
「いぬむこいり」の有森也実(C)2016 INUMUKOIRI PROJECT

 故鈴木清順監督に傾倒している片嶋一貴監督の異色ファンタジー映画「いぬむこいり」(太秦配給)が29日から、大阪・十三の第七藝術劇場で公開される。女優の有森也実(48)と組んだ4作目で「幸せの祈りを求めて生きる女性の、パンクな幻想世界を描いた」という片嶋監督に話を聞いた。

 片嶋監督の出自は「キャタピラー」などの巨匠・若松孝二(故人)で、「我に撃つ用意あり」(1990年)から参加している。5年後に「クレイジー・コップ 捜査はせん!」で監督デビューしたが、すぐにプロデューサーに転向し、鈴木監督の「ピストラオペラ」「オペレッタ狸御殿」についた経緯がある。

 「製作に厳しい若松プロで勉強し、憧れの鈴木監督の元で清順美学を直接学ぶことができた」。その後、テレビの特撮作品で手腕を発揮して自ら監督した「ハーケンクロイツの翼」を発表。本格的な映画は次の「小森生活向上クラブ」(古田新太主演)からで、「アジアの純真」「たとえば檸檬」「TAP 完全なる飼育」と続く。そのうちの3本で組んだ有森がミューズになった。

 3年ぶりの新作が「いぬむこいり」で、有森扮(ふん)するアラサーの女性、二宮梓が小学校教師を辞めて沖縄の島に旅をして放浪する物語。「話は『犬婿入り』という原作があったのだが、映画化ができず、ひらがなのタイトルにして別の話を作った」。梓に「イモレ島に行けばお前が望む宝物がある」というお告げがあったという設定で始まる。

 果たして、彼女は誰と出会って、どんな体験をして、どんな人生を紡ぐのか。全編4時間5分の長尺になった。その前半はオフビートなペテン師・アキラ(武藤昭平)、ファンキーな武器商人・レイコ(江口のりこ)、ゴロツキ革命家・沢村(石橋蓮司)、引きこもりの元ギタリスト・奥本(柄本明)らと出会って繰り広げる選挙騒動を描く。悪徳市長・鈴木(ベンガル)が敵になる。

 「石橋さん、柄本さんが『レノン・ゲバラ』になって、その世代のドラマが展開する。梓は途方に暮れるけれど、その怨念劇のカオスと不条理の中で、何を見つけ出すか。そして後半はいよいよ宝の島に入りそこで繰り広げられる『いぬむこいり』伝説の話に舞い込む。梓は『犬婿』の子をはらむという試練に遭遇する」

 後半は若手の俳優がたくさん登場し、緑魔子、PANTAらカリスマ的な俳優の姿も。「物語はファンタジーだけれど、主人公の生き方はリアルでもある。有森さんには特に『演技はしないで』とお願いした。それは彼女の地が出ることにもなり、悩みながら取り組んでくれて、とてもいい反応で満足している」。4時間の上映時間は「必要最小限だった」という。