来阪catch

奄美でルーツを探る

映画「海辺の生と死」
主演 満島 ひかり
2017年7月30日

島の音と匂いの中で

「13歳の時以来久々に流れ星を見た」と話す満島ひかり=大阪市内のホテル
満島ひかり(左)と永山絢人(C)2017島尾ミホ/島尾敏雄/株式会社ユマニテ

 「死の棘」などで知られる小説家の島尾敏雄と島尾ミホをモデルにした越川道夫監督の恋愛映画「海辺の生と死」(フルモテルモ、スターサンズ配給)が8月5日から、テアトル梅田で公開される。撮影の舞台になった奄美大島で「土地の音と匂いに包まれ、自分のルーツを探った」というヒロインの満島ひかり(31)に話を聞いた。

 「死の棘」は小栗康平監督がメガホンを取り、岸部一徳と松坂恵子主演で映画にもなっている。島尾敏雄とミホ夫婦の激しい葛藤劇としてよく知られる。その2人が戦争末期の1944年に奄美大島の家計呂麻島で出会い、恋に落ちた小説「海辺の生と死」(ミホ原作)の映画化が今回の作品である。

 「映画はミホさんの原作と、敏雄さんの『島の果て』をミックスし、ほかの作品の話も取り入れられている」という満島は、国民学校の代用職員をしていた大平トエに扮(ふん)する。トエと、島に駐屯した海軍特攻艇隊の隊長、朔中尉(永山絢人)が主人公だ。

 「私は沖縄県で育ったが、父親が奄美大島で、ルーツはここにあると思っている。越川監督はそれを知っていて声をかけてくださった。それから原作を読み直し、奄美に行って祖母らいろんな人に話を聞いて勉強した。言葉も独特だし、島尾夫妻の息子さんの伸三さんがセリフを録音してくださって、それを聞きながら島の人間になることができた」

 満島の芝居への取り組みは毎回役になりきることで知られるが今回は「私だけが地元だったので、その辺で世話係のようになって動いたし、いつもの役作りと違ったものになったかもしれない」と振り返る。「島に伝わる伝統的なものや、奄美島唄など、その音と匂いの世界に身を置いて聞こえてくるものに耳を澄ませると、そこにルーツが見えてくるような気がした」

 戦局が悪くなり、沖縄が陥落し敵艦は北上。島は一触触発の運命の中、朔中尉への特攻命令はまだ出ない。塩焼き小屋で逢瀬を続けながらも「もう会わないほうがいい」「いやです。私はあなたを愛しています」−と2人は狂おしく燃える。「トエさんは人間だけど、どこかで神の存在のようになっている。島では『神女(かみじょ)』という言葉があるがそれだと思う。私にもそれが流れているかもと思いながら演じていた」

 戦争で物質的なものは何もかもなくなってしまうが、「だから人が思うこと、思いを込めた精神的なものが島に色濃く残っている。朔中尉の無事を祈ってするみそぎのシーンは、その伝統の所作にそって演じた」。

 伸三さんは原作を「読まない」という信念を通しているという。それでもセリフの録音を手伝った。「何かあったのだろう思うし、それがとてもよかった。私が島唄を聴いて心が浄化されたのとよく似ているような気がする。30歳の年齢を挟んでこの作品に出会えたのもよかった」

 映画は最初3時間半バージョンだったが、2時間35分になったようで「全編気にいっています」。