来阪catch

「80年代の子ども目線で」

ベトナム映画「草原に黄色い花を見つける」
監督 ヴィクター・ヴー
2017年9月2日

イノセントな初恋を

「この映画を作って心が解放されたような気がする」と話すヴィクター・ヴー監督=大阪市中央区のシネマート心斎橋

 アメリカで生まれ育ったヴィクター・ヴー監督(42)が故国ベトナムで撮った「草原に黄色い花を見つける」(アルゴ・ピクチャーズ配給)が16日から、大阪のシネマート心斎橋で公開される。「1980年代後半の子ども目線で、イノセントな初恋を描いた」というヴー監督に話を聞いた。

 ヴー監督はアメリカの大学で映画を学びハリウッドの技術者として映画製作に関わることからキャリアをスタートさせた。「いつも胸の中では故国ベトナムの家族を描く映画を作りたいと思っていた。親がいつもベトナムの話をしてくれたこともあり、いつかはそこに帰って映画を撮りたいと思っていた」

 ハリウッドでベトナムを舞台にした「First Morning」(2003年)で監督デビュー。3本目の「Passport to Love」からベトナムに拠点を移し、09年から年に1、2本のペースで作品を撮っている。「好きな監督はスピルバーグやヒッチコック。日本映画の黒澤明も大好きで、彼の映画に出てくる風景はベトナムに似ているので親近感を持った」

 今日までコメディー、ホラー、スリラーなどのエンタメ作品を撮ってきたが、ここへきてベトナムの人気作家、グエン・ニャット・アイン原作の同作の映画化の話が舞い込んだ。80年代後半のベトナムの田舎を舞台にした貧しい家族の話で、12歳の少年と弟、そして近くに住む少女の短い時間の交流を描いた作品だ。

 「アメリカにいた僕は経験していないベトナムの話だが、親や親戚に聞いたことがあり、小説を読んでパーソナルなものとして胸に響いてきた。これを映画にしなくては僕自身の心の中の欠落は埋まらないと思った。その時代に詳しい映画監督のヴィエト・リンさんに脚本に参加してもらって、あの時代の子ども目線になり、彼らのイノセントな初恋を描いた」

 当時のベトナムは生活が厳しい時代で、少年ティエウ(ティン・ヴィン)と弟のトゥオン(チョン・カン)はフーイエン省の村で両親とひそやかに暮らしている。「田畑で遊んだり、たこ揚げをしたり、オートバイサーカスを見に行ったり。あの時代を再現しながら、それを懐かしい光景として見ている自分がいた」

 兄弟は仲がいいが、少女ムーン(タイン・ミー)にほのかな好意を持つ兄のティエウは、彼女と仲良くする無垢(むく)な弟のトゥオンに嫉妬し、大変な事件を起こす。「僕にも弟がいて、兄を崇拝してくれていたが、僕は決して優しい兄ではなかった。同じようにティエウの未熟ゆえの不安定さは原作の重要なテーマであり、弟や少女との悲しいすれ違いをファンタジーで描こうと思った」

 子ども3人の素朴な存在感がとてもいい。「ベトナムではこの映画のヒットで彼らは人気者になっている。彼らのかわいさと、誰にでもある人間のルーツというか、懐かしいふるさとを思い出してもらえれば…」