来阪catch

「女になりたい」願い尊く

ドキュメンタリー映画「恋とボルバキア」
監督 小野さやか
2018年1月6日

「女装する男子」生き方追う

「今度は家族も応援してくれた」と話す小野さやか監督=大阪・十三の第七藝術劇場
(C)2017「恋とボルバキア」製作委員会

 性別は男と女だけではないのではないか。ドキュメンタリー映画「恋とボルバキア」(東風配給)に登場する人たちを見ればそう思える。女性監督の小野さやか(33)が「女装する男子」たちにカメラを向けその生き方を追った。「女になっても大変だが、女になりたいと願う気持ちは尊い」という小野監督に話を聞いた。

 小野監督は日本映画学校の卒業製作でドキュメンタリー映画「アヒルの子」(2005年)を撮った。教授だった原一男監督がプロデュースにあたり、小野監督が自分自身の家族を撮ったセルフドキュメンタリーで、完成後家族の反対で上映中止になった。

 「アヒルの子」は完成から5年たって家族の許可が下りて上映することができた。「一時は映画の仕事から離れ故郷の愛媛に帰ったこともあった。その後、製作会社に入りテレビで『原発アイドル』を発表し、ギャラクシー賞奨励賞をいただき、再び映像世界に戻った」

 次にテレビで撮った「僕たち女の子」(13年)のとき、“女装する男の子たち”に出会った。「その後、彼女たちを本当に描けたのか気になって、もう一度映画で撮りたいと思った」のが今回の企画の動機。近年「FAKE」などのプロデューサーとして知られる橋本佳子に相談し企画がスタートした。

 「初めは男の人が女装する気持ちが分からなかった。それは女装という定義に収まるものではなく、彼女たちの愛の形をどう表現すればいいかを考え、何組かのカップルを中心にそれぞれの恋の成り行きも追いながら、どこへ行き着くかを探っていった。本音を話してくれるまで3年かかった人もいた」

 14歳のときから女性化して王子と呼ばれる彼は、2歳のときから女の子として生きているあゆと付き合っている。女装のみひろは女装雑誌編集長の男性に恋をしている。女性のじゅりあんは妻子と別れた女装のはずみと「偽物レズビアン」である。井上魅夜は義理の父親が好きで女装に走っている。そして50代になって女装している一子はタクシーの運転手である。

 「それぞれ大事な人を守るために生きている。それが自然のようであっても、その関係にはかなえられない悩みがある。その一つは子どもが産めないということであり、それゆえの人間トラブルもまた起きる。そんな面倒な関係になぜなるのかと思うが、それとは別にその状況が心地よいからというのも間違いない。女になっても大変だが、女になりたいという願いは尊い」

 「映画に出てくれた人たちはカメラの前で演技をしてくれたような気もするが、雰囲気で2人が別れそうなシーンを撮りたいというと、ドキュメンタリーでそんなことをするのはいけないと怒られた。それは終わりなき旅なのかもしれない」

 ※13日から大阪・十三の第七藝術劇場で公開。ボルバキアとは宿主を性転換させる共生バクテリアの一種。



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