来阪catch

異界の道への風景

ドキュメンタリー映画「港町」
監督 想田 和弘
2018年4月14日

デジタルをモノクロで

「この港町の夕暮れはモノクロの世界だと思った」と話す想田和弘監督=大阪・十三の第七藝術劇場
「港町」の一場面=(C)Laboratory X. Inc

 「観察映画」という独自のスタイルでドキュメンタリーを撮り続ける想田和弘監督(47)の新作「港町」(東風+gnome配給)が21日から、大阪・十三の第七藝術劇場で公開される。岡山県・牛窓の美しい海で撮影し「異界の道への風景が映った。デジタル映像をモノクロで見るような作品になった」という想田監督に話を聞いた。

 想田監督は栃木県出身で東大卒業後、1993年からニューヨークに在住し映画作家として活躍。自ら「観察映画」というドキュメンタリーの方法を提唱し、第1弾として「選挙」(2007年)を発表。作品の斬新さが受けて映画はヒットし話題になった。その観察映画第7弾が今作になる。

 前作「牡蠣工場」(15年)も牛窓で撮影。漁民と、出稼ぎの外国人労働者が一緒に働く姿など新しい形の生活空間が描かれた。「牛窓は妻でプロデューサーの柏木規与子の出身地という縁があった。いつものように撮影の終盤に、まちの風景映像を撮りに行って、老漁師のワイさんに出会う。そのしゃべりが面白くまた別の作品ができるかもしれないと思った」

 魚が捕れなくなったと話しながら、昔の漁の話をするワイさんの表情に人生の味わいがあった。「今、漁師はどんな生活をしているか。港町はどう機能しているかを、まちを散策しながら追った。漁師、市場の人、買い付けの魚屋さん、それを買う消費者、廃棄される魚を待つ猫…。そこへもう一人、地元のクミさんという老女が入ってくる」

 ゆっくり海辺で網の修理をしながらボソボソと話すワイさんと違って、クミさんは外野席から「あれやこれや」と撮影隊に声をかけてくる。「坂の上に神社があるから行けば」などとお勧めの撮影場所を教えてくれる。「少しうるさいと、初めは避けていたけれど、だんだん彼女の言葉が面白くなって、次第に彼女に導かれるようについて行った」

 クミさんのおしゃべりはさながら大阪のおばちゃんで、どこかしぐさがかわいく、憎めない。「そのうちクミさんは自分がどこからこのまちに来たか、どんな生活をしていたかなどを話し始める。それが今の話ではなく、ひょっとしたら万葉集の時代の話なのかと思えるくらい、不思議な感じがした」

 次第に「それはこのまちの中にある、もう一つの異界なのではないか、クミさんがその入り口に僕を連れて来てくれているのではないかと思うようになった」という。

 映画はカラーで撮影したがプロデューサーの「モノクロ映像にしたら」という助言を取り入れて編集を行った。「万葉時代のまちに色がついているのは考えられない。デジタルの映像をモノクロで見るドキュメンタリーにしようと思った」

 漁師のワイさんは90歳で健在だが、クミさんは亡くなった。映画の中で「さようなら」をするクミさんの姿がいとおしい。