来阪catch

被害者の主観映像で

映画「私は絶対許さない」
監督 和田 秀樹
2018年4月21日

レイプとトラウマと

「今までで一番監督の仕事ができたと思う」と話す和田秀樹監督=大阪・十三の第七藝術劇場
西川可奈子=(C)「私は絶対許さない」製作委員会

 15歳で5人の男にレイプされた少女のその後の生き方を描いた映画「私は絶対許さない」(R−18指定、緑鐵配給)が28日から、大阪・十三の第七藝術劇場で公開される。センセーショナルな実話の映画化で「事件でトラウマを抱えた女性を、被害者の主観映像で描いた」という大阪出身の和田秀樹監督(57)に話を聞いた。

 和田監督は東大医学部卒の精神科医で、劇映画「受験のシンデレラ」(2007年)で初メガホンを取って映画監督デビュー。国内外で映画賞を受けた後、介護離職を扱った2作目「『わたし』の人生 我が命のタンゴ」(13年)ではモナコ国際映画祭で人道的作品監督賞と秋吉久美子が主演女優賞を受けており、映画監督としての実力が高く評価された。

 「映画を見るのが好きで、いつの間にかこの世界に入っていた。今回の作品は若い頃アメリカに留学し精神分析で『トラウマ』をテーマに学んだとき、性的虐待を受けた人たちの話を多く聞いたことを思い出しながら考えた。日本の雪村葉子さんが書いた同名手記を読んで、これを映画化することで何か訴えられるのではないかと思った」

 東北の田舎の中学3年生だった雪村さんが5人の若者に集団レイプされた。彼女は手記に「15歳の元日、私は死んだ」と書いて、その後5人の犯人たちを恨みながら生きてきた。「彼女は30代後半の今、昼間は看護師、夜はSMクラブの女王として働いている。なぜそうなったのか。この映画を通して、性暴力の被害者と、その家族や加害者のことを考え、問題提起したいと思う」

 15歳の少女を西川可奈子、大人になってからを平塚千瑛が演じている。「どちらもまだ若手女優であるが、よく引き受けて出演してくれた。特に15歳のときの事件の現場を再現するシーンでは、それをどう見せるかを考え結局、カメラマンの高間賢治さんと相談し主人公の主観映像で撮ることにした。それはどんなひどい現場だったろうと思いながら」

 雪村さんは手記もそうだが、映画でも加害者のレイプ犯5人の実名を出すことを条件にしている。「激しい恨みがこもっているのはもちろんだが、レイプ場面の撮影に雪村さんを誘ったとき、断られると思っていたら迷いながらも『行く』とおっしゃった。撮影現場で彼女が何を考えていたのか想像するのは難しい」

 レイプ事件直後、汚れた服で家に戻ったとき、母親(美保純)に怒鳴られ、父親(友川カズキ)に殴られた。「これが二次被害で、せめて両親が彼女に優しく対処していたらその後は変わっていたかもしれない。結局、彼女は援助交際を受ける中年男(隆大介)や、風俗店で出会い結婚する中年男(佐野史郎)と短い縁を持つが、決して恵まれたとはいえない。彼女の復讐(ふくしゅう)というか、闘いはこれからも続くと思う」

 タイトルを決めたのは原作者自身で「これしかない」という思いがこもっている。和田監督が彼女のために完全主観撮影にチャレンジした作品である。



サイト内検索