来阪catch

ちょっとエッチで真面目

映画「のみとり侍」 
監督 鶴橋 康夫
2018年5月19日

映画化に30年かかった

「愛のある俳優さんのおかげで映画ができた」と話す鶴橋康夫監督=大阪市内のホテル
「のみとり侍」の阿部寛=(C)2018「のみとり侍」製作委員会

 テレビドラマの敏腕演出家で映画監督でも知られる鶴橋康夫監督(78)の新作「のみとり侍」(東宝配給)が大阪ステーションシティシネマほかで上映されている。主人公の阿部寛が「ちょっとエッチで真っすぐな侍」に扮(ふん)した痛快艶笑時代劇で「映画化するのに30年かかった」という鶴橋監督にいろいろ話を聞いた。

 鶴橋監督といえば読売テレビのドラマ演出家で、多くの名作を発表し芸術祭文部科学大臣賞を受賞するなどすごい実績の持ち主。映画監督としては寺島しのぶ&豊川悦司主演の「愛の流刑地」(2007年)で初メガホンを取り、「源氏物語−千年の謎−」(11年)、「後妻業の女」(16年)を経て今回の「のみとり侍」で4本目。小松重男さんの「蚤とり侍」を映画化したもので「30年かかりやっと実現した」という。

 「小松さんは映画畑から時代小説家に転身した人で、僕と同郷の新潟の出身。30年前にこの原作を読んで、テレビの芸術祭参加作品として作りたいと思った。最初に読んだのは直木賞候補になった『鰈(カレイ)の縁側』で、将軍の食事で魚が出る時に骨とり専門の『骨とり侍』がいたことを書いている。小松さんは江戸時代、不思議な職業を持った男たちを題材に多くの小説を執筆している。その中で『蚤とり侍』は一番印象的だった」

 「猫ののみとり」という職業は、町をめぐって主に主婦層に「猫ののみとりましょう!」と声をかける。その裏には「女性の心と体を癒やす」というもう一つの仕事「添寝業」が隠されている。「後妻業の女」では高齢男性を相手にする女性(大竹しのぶ)が主人公だった。「昔も今も変わらないという不変の面白さを今回楽しんでもらおうと思った。ちなみにテレビでこの企画は一顧だにされなかった」と苦笑いする。

 主人公の寛之進(阿部)は藩主の怒りを買い「のみとり侍になれ!」と言い渡される。「寛之進は真面目で、それを営む甚兵衛(風間杜夫)・お鈴(大竹)夫婦の協力を得て頑張るが、直接の指導は元武士で小間物問屋の主人をやっている遊び人の清兵衛(豊川)に頼り、彼から女性相手の技を伝授される。阿部さんは僕と同じ中央大の後輩で、僕は法学部、彼は理工学部。堅いタイプで、その表情も真剣。それがとても面白くいい味を出してくれた」

 一方で寛之進が住む貧乏長屋に友之介(斎藤工)という浪人がいて、話に絡んでくる。清兵衛は原作の「唐傘一本」、友之進は「代金百枚」という短編から取ったキャラクターで「寛之進の話と3本合わせて僕が自分で脚本を書いた」。寛之進に色っぽく迫る女に寺島しのぶ、清兵衛の鬼嫁に前田敦子。ほかに松重豊、桂文枝らが共演。「阿部さんとは映画は初めてだったがドラマで付き合いがあり、出演者の皆さんが僕の当て書きの理想のキャスティング。明るくおおらかで、一陣の風が吹いて、猫が見て居た−という映画にしたかった」

 原作者は昨年亡くなった。「なぜこういう不思議な題材にひかれたのか聞きたかった」