来阪catch

本名でやりたかった

映画「ゆずりは」
主演 滝川 広志
2018年6月16日

前に出ない昭和の男

「邪魔になる演技はまったくしなかった」と話す滝川広志=天王寺のアポロシネマ
「ゆずりは」の滝川広志(C)「ゆずりは」製作委員会

 物まね芸の人気者コロッケが本名の滝川広志(58)の名で初めて映画主演した「ゆずりは」(エレファントハウス/アジアピクチャーズエンタテインメント配給)が16日から、天王寺のアポロシネマ、十三の第七藝術劇場で公開される。「本名でやりたかった。こんなに前に出ない人間の役は初めて」という滝川に話を聞いた。

 新谷亜貴子の同名原作(銀の鈴社刊)を加門幾生監督が映画化。ある地方都市の葬儀社で起きる「死」と「生」の中の人間ドラマを見つめた作品で、同所で働く主人公を演じているのがコロッケこと滝川。

 「話を聞いて僕でいいのかとまず思った。もしやるなら本名でやらなければと…。だって僕は38年芸能界で生きてきて、物まね芸も含めて真面目な役はやったことがない。ふざけないでやる演技ができるだろうかと悩んだけれど、僕に声をかけてくださるのだから、何か狙いがあるのだろうし、やってみる価値はあると思い直し、主人公の水島のつもりで、舞台となる千葉県八千代市に行って、その空気を吸うことから始めた」

 水島は葬儀社の部長で、そこの社長の娘婿だったが、妻の自殺という事件があって、どこか控えめな人生を送っている。「妻がなぜ死んだかということもあるが、葬儀社の仕事は亡くなった人を送る役目で、決して人の前に出てはいけない。少しでもふざけたり、笑ったりしてはいけない。僕が普段やっていることと正反対だった」

 葬儀社に若い新入社員・高梨(柾木玲弥)が入って来て、一見無頓着に見える若者で他の社員から敬遠されるが、水島が彼の中にある本質を見つけ出し、それを育てていくという物語だ。「映画の主演は僕だが、本当の主役は高梨で、彼が成長していく話。そう思って取り組んだが、撮影中は監督から何度も『動きすぎ』の注意があったので、邪魔な芝居は一切しないように努めた」

 葬式のシーンが6回ある。それぞれ本物の葬儀社がそれをセッティングして行われた。「女子高生の葬儀のシーンで、絶対に参列者に接して感情をあらわにしてはいけないのに、その子の死の裏側にあったことを考えると最後は本当に泣いてしまった。あそこまで入り込む芝居というのも初めての経験だった」

 「ゆずりは」は、春先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することからそう呼ばれる常緑樹。これが実際のロケセットの葬儀社の庭に植えられた。「撮影は3週間だったが、東京に戻ると映画の世界が消えるから、ずっとここに留まった。おかげで今まで演じたことがない人物が演じられた。声もコロッケと違うと思うし、同世代の昭和男の加門監督に新しい扉を開けてもらったような気がする」

 原田佳奈、高林由紀子、大和田紗希、島かおり、勝部演之が共演。「僕はもう少し水島本人の成長する姿が見たいので、続編を作ってもらえないかと思っているんです」