来阪catch

誰も責任をとらない

映画「サムライと愚か者−」
監督 山本 兵衛
2018年8月4日

異文化の衝突と沈黙

「異文化の違いはいろんなジャンルで問題を起こしている」と話す山本兵衛監督=大阪市北区のシネ・リーブル梅田
「サムライと愚か者―」の一場面(C)チームオクヤマ/太秦

 日本の大企業で起きた経済事件を扱ったドキュメンタリー映画「サムライと愚か者−オリンパス事件の全貌−」(太秦配給)が11日からシネ・リーブル梅田で公開される。イギリス人社長と日本人重役の対立で浮かぶのは「異文化の衝突」であり、結果として「誰も責任をとらなかった」という山本兵衛監督(40)に話を聞いた。

 山本監督は大阪・住吉の出身で高校生の時にアメリカに渡り、マサチューセッツ州の高校を卒業後、ニューヨーク大で映画製作を学ぶ。短編映画を数本発表し国際映画祭で上映された。今回は初の長編で、イギリス、フランスなど5カ国と提携し、日本の奥山和由がエグゼクティブプロデューサーを務めている。

 「奥山さんは元松竹の専務で、会社の内紛に巻き込まれて退職を余儀なくされた。オリンパス社長のマイケル・ウッドフォード社長が突然、役員会に行ってたった8分で解任された事件と似ていると僕に言った。これを映画にしたいので一緒にやろうという話になった」

 ウッドフォード氏が社長に就任して3カ月後に、業界紙月刊FACTAに載ったオリンパスの暴露記事を機に、ウッドフォード社長の解任劇につながっていく。「オリンパスの不正疑惑は、1400億円の負債隠しで、それを『飛ばし』という方法でしのいでいたというのだ。もちろんそれは違法で、ウッドフォード氏は菊川剛前社長や重役陣から全くその事実を知らされていなかった」

 ウッドフォード氏は経済誌の記者に「会社の不正を告発して私たちの立場を支持してくれた小数の社員はサムライで、不正を隠してきた会社役員は愚か者だ」と激高。「ウッドフォードさんは自身をサムライだと思っており、役員の言うことに耳を貸さない。役員側はウッドフォードさんのことを空気が読めず、自分たちが会社を守るために取った手段に理解がないと思う」

 会社の負債はバブル崩壊時のもので、以来20年にわたって先代社長以下役員が隠してきているという。「それは愚かな行動であり、犯罪でもあるが、その原理は日本人的で、会社人間にとって彼らはサムライといえるかもしれない。それを卑劣というウッドフォード氏は重役陣にとっては愚か者に見えたのかもしれない」

 イギリスなどの反響は「日本人の重役たちは論外で、ウッドフォード氏こそ正義だとたたえる声がある一方、重役陣にある日本の文化、国民性がそこに透けて見え、どちらが悪いという問題ではないような気がする」という声がある。「この事件を扱ったメディアの対応も含めて、政治的、社会的な問題が背景に詰まっている。結果として、今、何もなかったという沈黙と同時に、誰も責任をとらない状態になっている」と山本監督は本音を吐露する。

 次回作はタトゥーを扱う彫物師(刺青師)に医師免許がいるかどうかについて取材中で「これも外国と日本の異文化の違いがあり、考えなければいけないテーマが詰まっている」。