来阪catch

少女のアンテナを信じて

映画「ビブリア古書堂の事件手帖」
監督 三島 有紀子
2018年11月3日

堂島の本の問屋街で育った

「エンタメ性の強い作品になった」と話す三島有紀子監督=大阪市内のホテル
黒木華(右)と野村周平(C)2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会

 NHKでトーク番組「トップランナー」やドキュメンタリーを数多く手がけ、その後映画界に転身した三島有紀子監督の新作ミステリー「ビブリア古書堂の事件手帖」(20世紀フォックス+KADOKAWA配給)がTOHOシネマズ梅田・同なんばで上映されている。大阪出身で「堂島の本の問屋街で育った元文学少女のアンテナで撮った」という三島監督に話を聞いた。

 NHKを退局しフリーで映画の助監督、シナリオ修業をして、大泉洋と原田知世が夫婦を演じた牧歌的なホームドラマ「しあわせのパン」(2012年)で監督デビュー。続く「ぶどうのなみだ」(14年)は大泉と安藤裕子のロマンチックな恋物語だった。「繕い裁つ人」(15年)から、「少女」(16年)、「幼な子われらに生まれ」(17年)へと社会派タッチが強まった。「幼な子−」はモントリオール世界映画祭で審査員特別賞を受賞。

 新作は三上延の同名人気ミステリーの映画化。「これまでと違ったエンターテインメント性が強い作品で、今度は主人公の篠川栞子(黒木華)が文学少女で、極度の人見知りなのに文学に強く、洞察力と推理力に富んでいるのが魅力的でとてもやりがいがあると思った。子どもの頃、大阪堂島の本の問屋街で育ったので自分と重なるところがあった」と顔がほころぶ。ビブリアとは「本を愛する人」。

 物語は鎌倉の小さな古書堂で店主をしている栞子が主人公で、そこへ近くに住む青年の五浦大輔(野村周平)が古い夏目漱石の「それから」の文庫本を持ち込むところから始まる。それは大輔の祖母(渡辺美佐子)がある男性から贈られた本で、栞子は「隠れた恋が秘められている」と推理し昭和の時代に物語を重ねていく。やがて栞子は自分の祖父から譲り受けた太宰治の「晩年」初版本の存在が大輔の祖母の話とつながっていくことに気付き、がくぜんとする。

 「黒木さんの栞子はあまり人づきあいが得意でないが、その推理力を発揮し名探偵の顔になるとかわいくカッコいい。前作『繕い裁つ人』の時彼女に車イスの女性を演じてもらっており、謎を秘めた感じがあった。それが今回につながった。黒木さんは大阪出身で、相手役の野村君が神戸出身。私を入れた3人は仕事の合間、親戚のように関西弁でワイワイやっていた」

 映画の舞台は鎌倉で大輔の祖母の若い頃(夏帆)と、本の贈り主である青年(東出昌大)の秘めた恋が回想される。「ロケ場所は助監督と一緒に探し回って、伊豆下田で三島由紀夫が通っていた散髪屋を見つけた。これはいけると私の(文学の)アンテナが震えた。私の父親が三島由紀夫好きで、私の名前はそこから来ている」

 栞子と大輔の恋、そして昭和の恋物語に、「それから」と「晩年」の本を巡って謎解きのドラマが錯綜(さくそう)する。「ミステリーと人間ドラマも楽しんでほしい」。成田凌が共演し、サザンオールスターズが主題歌を提供している。



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