来阪catch

ブロードウェイの舞台へ

ドキュメンタリー映画 「シンプル・ギフト」
監督 篠田 伸二
2018年12月8日

アフリカと日本の橋渡し

「みんなが居場所を見つけて第一歩を」と話す篠田伸二監督=大阪・十三のシアターセブン
アフリカと日本の子どもが一緒に踊る「シンプル・ギフト」の一場面

 親をエイズで亡くしたアフリカの子どもたちと、東日本大震災で家族を亡くした遺児たちが一緒にブロードウェイの舞台に上がった実話を記録した映画「シンプル・ギフト〜はじまりの歌声〜」(ポルトレ、ニッセンジャパン配給)が8日、大阪・十三のシアターセブンで公開される。「両国の橋渡しで、アメリカ本場の舞台で踊り歌った子どもたちと周囲の人々の心意気を追った」という篠田伸二監督(57)に話を聞いた。

 あしなが育英会の玉井義臣さんが提案して、ミュージカル「レ・ミゼラブル」などの演出家で知られるイギリスのジョン・ケアードさんが演出した舞台の裏側をテレビ界出身の篠田監督が記録して撮りあげた。育英会の玉井さんは「あしながおじさん」で知られる事業家。悲しみを共有するアフリカと日本の子どもたちが悲しみを越えて一緒になって歌い、踊るシーンは感動的である。

 「玉井さんとケアードさんは共にアフリカの親のない子を支援する運動をしており、舞台になった『あしながおじさん』で知り合い玉井さんがアフリカの子と日本の子が一緒にブロードウェイの舞台に立てば、その悲しみが少しでも癒やせるのではないかと訴えたのがその最初だった」

 玉井さんがウガンダで携わる「レインボーハウス」は親がエイズ死し、食べるものも生活する場所もない子どもたちのための施設。「ここの子どもたちをアメリアのヴァッサー大学准教授で音楽家のクリスティーン・ハウエルさんが歌と踊りを教えた。音感がよく踊りが上手な子どもたち。その日々の生活と練習を追いながら、次第に主力メンバー3人の子どもの辛い体験を重ねて描いている」

 一方でケアードさんは東日本大震災の東北地方を訪れ、被災地を支援で巡りながら、地元で太鼓の演奏活動をする若者たちと出会い一緒に「ブロードウェイに行かないか」と声をかける。「アフリカの子も、日本の子も、大切なものを失っている。お互いに悲しみを抱えているのは自分たちだけではないと思う。そこから導き出されるのは『日常の尊さ』で、それが映画のテーマにつながっていく」

 映画は2013年から約4年かけてアフリカと日本の子どもたちのチームを追いかけた。その300時間を1時間半にまとめた。ケアードさん、クリスティーンさん、そして「あしながおじさん」の原作者ジーン・ウェブスターさんも通ったヴァッサー大学のコーラス部女性2人も参加して、舞台が形になっていく。アフリカから日本公演を経てブロードウェイ公演に向かう子どもたちの顔が生き生きしている。

 「子どもも大人も、参加した全員が自分たちの『居場所』を見つけたという顔がとてもいい。日本の東北から参加した日下マリアさんは、その後結婚し母親になった」。篠田監督はうれしそうにほほ笑んだ。