来阪catch

今の時代とリンクして

「この道」
監督 佐々部 清
2019年1月5日

白秋と耕筰が生きた時代

「日本語が美しい時代を…」と話す佐々部清監督=大阪市福島区のABCテレビ
大森南朋(左)とAKIRA(C)2019映画「この道」製作委員会

 「雨降り」「からたちの花」「この道」など日本初の童謡を作った作詞家の北原白秋と作曲家の山田耕筰を主人公にしたエンタメ音楽映画「この道」(HIGH BROW CINEMA配給)が11日から、TOHOシネマズ梅田・同なんばで公開される。「白秋と耕筰が生きた時代を、今の時代とリンクして描いた」という佐々部清監督(60)に話を聞いた。

 「陽はまた昇る」(2002年、東映)で監督デビューした佐々部監督は「チルソクの夏」(04年)で日本映画監督協会新人賞、「半落ち」(同)で日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた実力派。その後も「出口のない海」「夕凪の街・桜の国」など社会派エンターテインメント映画を撮った名匠だ。

 新作「この道」は昨年が童謡誕生100年ということでプロデューサーから依頼があった。「偉人伝としてではなく、あの時代を生きた人間として描くことと、白秋は3回結婚し、姦通(かんつう)罪を犯したりしていて、ある意味やんちゃで滑稽な人。耕筰も3回結婚しているが、人間的には硬派で、それが2人の絆を強めることになるプロセスとしてとらえた」

 白秋に大森南朋、耕筰にEXILEのAKIRA。「大森さんは昔から見ているが、やんちゃな感じがあって、今回の白秋像にぴったりだった。冒頭で松本若菜さんが演じる女性(後の奥さん)と色っぽいシーンがあり、いい雰囲気の出だしになった。AKIRAさんは彼自身真面目な感じの人で、大森さんと対照的でドラマが面白く絡んだ」

 白秋と耕筰は最初会って性格の違いでぶつかり合うが鈴木三重吉(柳沢慎吾)が創刊した「赤い鳥」という児童文学誌を通して、日本で初めてという童謡をつくることで意気投合する。白秋が日常生活で「ピチピチ、チャプチャプチャプ〜」とか「チョッキン、チョッキン、チョッキンナ〜」と歌う場面が何度か出てくる。「こんな美しい日本語を、われわれは忘れていたような気がする」

 「からたちの花」がラジオ開局記念の放送で披露されるシーンで童謡歌手の安田祥子・由紀さおりが登場。「2人がこの映画のことを知り、ぜひ歌いたいと申し出をしてくださった。とてもいいシーンになった」と顔がほころぶ。撮影は東映京都撮影所で行われた。本格的にここで映画を撮るのは初めてで「スタッフの技術も含めて日本映画の伝統が残った場所。明治、大正の時代背景を見事に作ってもらった」。

 関東大震災を再現するシーンもある。「近代では阪神・淡路大震災、東日本大震災があったのでそれを意識した。また戦争に走っていく当時の世相の空気も、今の時代に似ているような気がした。昔の童謡を知らない若い世代に白秋と耕筰が生きた時代を、今の時代とリンクさせて見てもらえればうれしい」

 与謝野晶子に羽田美智子、鉄幹に松重豊、白秋の3人目の妻に貫地谷しほりが扮(ふん)している。主題歌「この道」はEXILEのATSUSHIが歌っている。



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