来阪catch

人の危うさと青臭さ

映画「夜明け」
監督 広瀬 奈々子
2019年1月12日

柳楽さんと一緒に探る

「みんなと一緒に作っていくという映画のプロセスが好き」と話す広瀬奈々子監督=大阪市北区の梅田スカイビル
柳楽優弥(右)と小林薫(C)2019「夜明け」製作委員会

 広瀬監督は神奈川県出身で武蔵野美術大映像学科を卒業後、社会との関わり合い方が分からずもんもんとしていたという。「東日本大震災があった2011年で、頭にあったのは狂気に近い依存関係。その時の感情を下敷きにして書いたのが『夜明け』だった。時間を経てそれを映画化することができて今はとても幸せ」

 職に就かず迷っているとき、友人の紹介で是枝監督がアシスタントを募集していることを聞き、ダメもとで応募したら受かった。「130人の中から2人だったのでとてもラッキーだった。そこで是枝組の作品『そして父になる』や、是枝さんの弟子だった西川美和監督の『永い言い訳』などの作品についた。とても濃密な映画修行だった」

 是枝、西川の監督コンビが14年に映画製作集団「分福」を立ち上げた。テレビや映画などの製作に関わる仕事をする集団で、2人の監督のほか広瀬監督など15人が所属している。「適宜、それぞれが企画を考えて提出し、良ければいろんなところに売り込んでいく。その中で私の脚本『夜明け』の映画化も決まった。あらためて脚本をいじり、是枝、西川の両監督から助言をいただいて、撮影に入った」

 主人公は大学を卒業して、ある事件に遭遇し近郊の町に逃げ込んで来た青年のヨシダシンイチ(柳楽)で、木工所を経営している涌井哲郎(小林薫)と知り合い、その家に居候させてもらう。「昔の私自身に重なる主人公で、脚本を書き直す中でシンイチの役を是枝さんの『誰も知らない』(04年)で主人公を演じカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した柳楽さんの名前が挙がった。すごいプレッシャーだったが、因縁を感じてうれしかった」

 シンイチが実は別名の本名があり、過去があることが哲郎に知れる。一方の哲郎も8年前に妻子を亡くした悲しい過去がある。「血はつながっていないけど、2人はお互いに親子関係に似た感情が湧いてくる。それが狂気に似た依存関係ということになるのかもしれない」

 やがてシンイチは、過去を清算し哲郎の家を出ようとするが、哲郎は彼を亡くなった息子に重ねて木工所を継がせたいと思う。「どうしてすれ違いが起こったのか。人間のつながりは残酷でエゴもひそんでいる。人の心の危うさと青臭さ。世代の違う2人の内面をのぞきながら、そのどうしようもなさを描きたかった。柳楽さんと小林さんが一緒になってそれを考え演じてくださった。『夜明け』というのは、心もとない私の心境。次回作は女性の主人公を考えている」



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