連載・特集

日曜インタビュー

失敗恐れず果敢に挑戦

映画「はやぶさ/遥かなる帰還」主演
渡辺謙
2012年2月19日

被災地に思いはせ撮影

渡辺謙(左)と江口洋介=(c)2012「はやぶさ遥かなる帰還」製作委員会
「あきらめず挑戦することをテーマに」と話す渡辺謙=大阪市福島区の朝日放送

 映画「はやぶさ/遥かなる帰還」(東映配給。瀧本智行監督)が全国公開中で、主演の渡辺謙(52)が「被災地をはじめ全国をプロモーションで回った。日本再生のキッカケは地方からという思いを強くした」と振り返る。同作2度目のPR来阪で熱い思いをあらためて聞いた。

■再生は地方から

 −同じ作品で2度キャンペーンに来るのは珍しい。

 いろんなところを回らせてもらってその感想を含めてお話したかった。やはり一番は東日本大震災の被災地を回って多くの被災者の皆さんに映画を見ていただき少しでも元気になっていただきたかった。被災地はもちろん、日本の再生は地方からとあらためて思った。ここが元気にならなければ明日の日本はない。

 −「はやぶさ−」は主演でプロジェクトマネージャーも務めた。

 映画の撮影は昨年5月から始まったが、その前の段階から3月11日に起こったことを抜きにこの映画を作ることは考えられなかった。この映画は被災地の皆さんに見ていただきたいと痛切に思い、それが大前提で撮影をスタートさせた。映画のラストで「はやぶさ」に故郷の地球を見せてあげたいという思いとそれは重なった。「僕たちの地球はどうなっているの?」という問いかけもそこに込めている。それは自分たちを映す鏡であり、はね返ってくる。

 −俳優としてだけでなくプロジェクトマネージャーとして作品をふかんしている。

 映画に臨む姿勢としてはこれまでとポジションが少し違っていたのは確か。同時に小型探査機「はやぶさ」の7年間60億キロの旅と「サンプルリターン(小惑星イトカワのかけらを持ち帰る)」を成功させることにかけるJAXA(宇宙航空研究開発機構)のチームの面々を演じた俳優さんと、それをカメラで撮る監督らスタッフが同じ目的を共有しながら同時進行の形で作品にかかわる。

■リーダーの要求

 −JAXAのリーダーのモデルの川口淳一郎さんはどんな人?

 演じる前にお会いしていろいろお話をうかがったが、素晴らしい人。余計なものを挟まず、熟知した上で、150%をチームのメンバーに求める。今ある危機を乗り越えるために、挑戦する。メンバーはリーダーの要求に応えざるを得ないような説得力がある。むろん映画は群像劇で、役の大小よりもそれぞれの役を忠実に演じることにみんなが集中していた。

 −「はやぶさ」が行方不明になり緊張感が走り、チームがバラバラになる。

 JAXAの江口洋介さんと、NECから出向している技術者の吉岡秀隆さんの激論は官僚と民間人、組織と個人など普遍的なテーマがある。そしてリーダーの決断。川口さんがすごいのは、インスピレーションもそうだが、成功、不成功よりも最終目的を「サンプルリターン」と決めていること。結果的それに成功して、米国のNASAを驚嘆させた。最終目的を高く掲げること。予期せぬ出来事の中でそれを忘れず、恐れず挑戦する。失敗すれば「何が足らなかったのか」を忍耐強く調べること。

 −準備期間を入れると「はやぶさ」計画は30年以上かかっている。

 宇宙開発で働く技術者は普通の時間感覚とは違う。自分たちの世代だけでそれが「完結」するとは思っていない。失敗を繰り返して、成功がある。その意味で映画のサブテーマは「順繰り」ということになる。「継承」と言ってもいい。父から息子、そして孫へ−のように。

■阪神は大丈夫!

 −ところで沖縄の阪神キャンプを訪れてチームを激励した。

 阪神はまさにトップ(監督)が交代しての1年目で、組織はトップが代わると当然中身も変わる。和田豊監督に会って、その職責に重圧を感じているのはよく分かったが、大丈夫! グラウンドの和田さんを見て、2、3年監督をやったような風格があった。これまでに、監督になるための準備を怠っていなかったような気がする。しかし実践で予期せぬことが起こるもの。映画の「はやぶさ」ではないが、リーダー術の応用で乗り越えてほしい(笑)。阪神ファンとしては楽しみです。

 わたなべ・けん 1959年生まれ。新潟県出身。演劇集団「円」に所属し、NHK大河「独眼流正宗」(87年)で人気者に。映画「天と地と」(89年)の主役を白血病治療のため降板。その後不死鳥のように復活。坂上順プロデュース「陽はまた昇る」(2002年)を経てハリウッド映画「ラストサムライ」(03年)でトム・クルーズと競演し「世界の謙さん」に。「イーストウッドのような才能」(坂上談)という声も。