日曜インタビュー

初めて平成の人演じる

映画「スキャナー 記憶の カケラをよむ男」 
主演  野村 萬斎
2016年5月1日

「所作が正反対だけど…」

「特殊能力で社会貢献できる役だけど…」と話す野村萬斎=京都市内のホテル
◎野村萬斎(左)と宮迫博之=(C)2016「スキャナー」製作委員会

 狂言師の野村萬斎が「初めて平成の人の役を演じた」という映画「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」(東映配給、金子修介監督)が大阪ステーションシティシネマほかで上映されている。「時代劇と所作が正反対だけど、探偵キャラで面白かった」という野村に初体験の感想を聞いた。

■3歳から狂言師

 −初めての現代劇の主演映画。

 3歳の時から狂言師をやっているし、根っからの古典で、映画では「陰陽師(おんみょうじ)」や「のぼうの城」をやっているので時代劇のイメージが強いかもしれない。特に「平成の人」ということを考えて演じたので、時代劇的な様式美を封印。仙石和彦という変わり者で、殺人事件に巻き込まれて探偵のようなことをする役どころ。時代劇と所作が正反対で最初は戸惑ったが面白かった。

 −仙石は映画オリジナルの人物。

 「三丁目の夕日」や「相棒」シリーズなどの脚本家、古沢良太さんが書いたオリジナルで、僕のキャラクターを考えてあて書きしてくださった。それにしても元漫才師で、今はマンションの管理人で屋上の部屋でひっそり暮らしている根暗の役どころで僕自身とは正反対。それを僕が演じたら面白いというのが狙いかもしれない。

 −特殊能力で人間の「思念」をよむ事ができる。

 「思念」は物や場所に残った人間の記憶や感情が一体となった波動の塊のこと。その粒子と自分の粒子の波長を合わせれば情報を写し取ることができる。それを生かして漫才師になったがうまくいかず、世間から一歩引いて生きている。それがある若い女性(杉咲花)から姿を消したピアノ教師(木村文乃)を探してくれと頼まれる。

■漫才の特典映像

 −探偵役はテレビで演じたことがある。

 三谷幸喜さんが書いたドラマ「オリエント急行殺人事件」でエルキュール・ポアロのような探偵をやったが、時代が違う。漫才は宮迫博之さんとコンビでやって、狂言も漫才も「話芸」ということでは同じなので結構面白くやれた。コミカルな味も出たし、特典映像になっている(笑)。

 −仙石の衣装が変わっている。

 軽装だと「思念」を拾ってしまうので外出時は季節に関わらず超厚着をしている。コート、ストール、耳あて、帽子、マスク、ゴーグルといった感じの仙石グッズでかためている。姿勢も猫背で、奥まった声。狂言は姿勢を真っすぐにして、腹の底から出るような声を出すので全く反対。撮影中に背筋が伸びたりすると監督から注意されることもあった。

 −それでも「思念」というのは日本的な古典に通じる。

 それが仙石の一番の人間性で、生き方に重なっている。特に事故や事件で亡くなった人の「思念」にはいろいろ悔しさとか、思いが残っており、それを残った人に伝えるという行為は「社会貢献になる」と仙石は思っている。その辺は映画のサスペンスになっていると思う。「心の闇に一条の光りがさす」と。

 −狂言にも先人の「思念」が残っている?

 台本にそれは残っているし、その思いをよんで、台本に沿った演技をしなくてはならない。今回の映画の脚本は現代のものだが、それには作者の思いがこもっているし、同じことかも知れない。探偵をやるとすれば、横溝正史の作った金田一耕助もいるわけで、それを考えることも悪くはないと思う。狂言は目使いなど決め事があるが、それは現代劇と違うものの、つながっているのは同じかもしれない。

■「古木」の深み

 −仙石は人間嫌いという欠点もある。

 孤独な人は思い入れが強いかもしれない。しかし、事件を通して仙石に見えてくるものがあり、信じたいという思いが強くなっていく。その辺に仙石の成長物語があるので楽しみながら演じた。特殊能力を個性にして、仙石は頼もしくなっていく。形と心の二つで「古木」の深みが出る。そうなっていればいいと思っている。

のむら・まんさい 1966年生まれ。東京都出身。3歳で狂言の初舞台を踏み、一筋に。テレビドラマ「あぐり」(97年)出演後、俳優としても幅広く活躍。映画は「乱」(85年)「陰陽師」シリーズ(2001、03年)「のぼうの城」(12年)などのヒット作がある。次回作「花戦(いく)さ」(来年公開)では華道の池坊専好を演じる。