日曜インタビュー

遠くに連れて行きたくて

映画「団地」
監督 阪本 順治
主演 藤山 直美
2016年5月29日

月日の流れを大事に

16年ぶりのコンビ作に取り組んだ藤山直美(右)と阪本順治監督=大阪市内のホテル
(左から)藤山直美、岸部一徳、斎藤工=(C)2016「団地」製作委員会

 2000年度の映画賞を総なめにした「顔」の阪本順治監督と藤山直美が16年ぶりにコンビを組んだ新作「団地」(キノフィルムズ配給)が6月4日からTOHOシネマズなんば、シネ・リーブル梅田で公開される。「月日の流れを大事に」と藤山がいえば、「彼女を遠くに連れて行きたくて…」と阪本監督。お互いに笑顔で話が弾んだ。

■久々のコンビ作

 −16年ぶりの“再会”はどうだったか。

 阪本 「顔」をやった時は、最初で最後と思って全力で取り組んで、お互いにすべてを出し合ったという感触があった。多分、撮影直後は、藤山さんは僕の顔を見るのもいやだったと思う。その意味で、16年たったから、もう一度「初めまして」という感じでやることができた。

 藤山 久しぶりに阪本監督と映画の仕事ができてうれしかった。「顔」の時は40歳くらいだったが、もう50代後半になってシミ、シワ、白髪、ほうれい線も出てきた。16年という月日の流れを大事にして、この作品に取り組もうと思った。私は舞台の人間で、阪本さんは映画の人。阪本さんの演出に100%応えたいと思った。

 阪本 数日でプロットを考え、藤山さんが団地のフツーのおばさんで、夫に岸部一徳さん、自治会のメンバーに石橋蓮司さん、大楠道代さんというキャスティングを決めて、1週間で脚本を書いた。

 藤山 一徳さんは19歳のときからお世話になっており、20歳のときは恋愛相談に乗ってもらったことも(笑)。大楠さんは当時、安田道代で勝新太郎さんの「座頭市」シリーズの1本で共演したことがあった。石橋さんは「ぜひ」と監督にお願いした。20歳の頃テレビで共演したことがあった。

■フツーのおばさん

 −脚本を読んでどう思ったか。

 藤山 最初に読んだとき、何とまあ、ヘンテコなお話を考えはったんやろうと、驚いた。あきれたといった方がいいかもしれない(笑)。舞台の世界で生きている私にとってすべてを預けられるただ一人の監督さんだから「監督のアイデアがあるのだろう」と思ったし、お任せしようと思った。私は「フツーのおばさん」をやればいいと。

 阪本 藤山さんと団地のイメージが重なった。そこでラストシーンのイメージが最初にできて、物語につながっていった。後半はSF物語になっていくが、星新一さんの本や、アーサー・C・クラークのそれの影響があるかもしれない。脚本を読んだ石橋さんからラストは「逃げるなよ」と助言してもらったので、そこは丁寧に描いた。

 −フツーのおばさんは難しかった?

 藤山 私は芝居するときは必ず「もう一人の私」を設けている。昔は善悪を行動の判断基準にしていたが、近年は「いろんな人がいるのが世間やから」というのが基準になっている。今回のフツーのおばさんは、ある不幸を背負っていて、夫婦2人だけで団地に引っ越して来た女性。悲しいし、寂しいという環境が軸になっている。それでも、夫婦仲良く笑って暮らしている。

 阪本 僕は近年、映画界が少しいびつになっているのでダークな気持ちになっていた。それをこの映画にぶつけた。こんなおじさん監督が「キテレツな作品を撮ったよ」と言いたい。そんなはみ出しぶりを若い映画監督に見てもらいたい。作品には相性もあるが、万人に愛される映画になっていると思う。

■地元で支持を

 −2人とも関西出身で、地元公開は気になる?

 阪本 大阪で上映するのは怖い気がする。デビュー作「どついたるねん」のとき、大阪では最初評判は悪かったから。それでも大阪の映画はその後も作っており、今回は藤山さんの映画だから多くの人に見てほしい。

 藤山 私は関西の人は1番親切やと思う。思ったことをズバリ言ってくださるのは、逆にうれしい。野田阪神や京阪のおばちゃんから「よかったよ」と言ってもらいたい。いずれにしてもジャッジするのはお客さんですから。

 さかもと・じゅんじ 1958年生まれ。大阪府出身。89年に「どついたるねん」で監督デビューし新人監督賞多数。「王手」など通天閣3部作を経て藤山主演「顔」で各種映画賞受賞。吉永小百合主演「北のカナリアたち」など多数監督。
 ふじやま・なおみ 1958年生まれ。京都府出身。4歳から舞台に立つ。映画初主演作「顔」(2000年)で各種主演女優賞を総なめ。喜劇王・藤山寛美の三女。関西の喜劇を継いでいる。舞台、ドラマ多数。7月、新歌舞伎座に出演。