日曜インタビュー

怒りを純化した疾走シーン

映画「少女」
監督 三島 有紀子
2016年10月2日

闇は絶望だけではない

「17歳の少女の闇を描いた」と話す三島有紀子監督=大阪市北区の東映関西支社
本田翼(右)と山本美月=(C)2016「少女」製作委員会

 湊かなえの同名ミステリー小説を映画化した「少女」(東映配給)が8日から、梅田ブルク7ほかで全国公開される。17歳のヒロイン2人の心の闇を描いた作品で「闇は絶望だけではない。そこにある怒りを純化した形でラストの疾走シーンにつなげた」という三島有紀子監督に話を聞いた。

■湊原作に初挑戦

 −女性映画のイメージはあったが、今度は湊かなえ原作にチャレンジした。

 プロデューサーから「湊かなえ原作をやらないか」と声をかけられた。「告白」の後に書かれた「少女」の印象が強く、あらためて読み直して、17歳の少女の闇が描かれており、以前からやりたかったテーマと重なった。17歳はキラキラした季節というイメージがあるが、多くの場合、生きづらく、暗闇の中を息を殺して進んでいるようなところがある。

 −本田翼と山本美月が女子高生のヒロインを演じている。

 原作にある「夜の綱渡り」という言葉がとてもよくて、そのヒロイン2人が疾走しているシーンが映像で浮かんだ。由紀(本田)と敦子(山本)は全く違うイメージの女優さんにお願いしたかったのでぴったりだった。家族のことで闇を抱えている由紀と、明るい剣道女子だった敦子はある時からクラス女子のイジメを受けている。小さいころから仲良しだった2人の闇の物語になっている。

 −2人が何を考えているかがミステリーになっている。

 由紀は小説を書くのが得意で、敦子を応援するためにそれを書いている。「夜の綱渡り」をしている敦子を救いたいと思っている。敦子は最初それを知らず、彼氏(真剣佑)と付き合っている由紀と距離を置くようになっている。そこへ転校生の紫織(佐藤玲)が入って来て、「人間が死ぬ瞬間を見た」という言葉で、2人が動揺する展開になる。

■世界は広い!

 −由紀は書き上げた小説原稿を盗まれる。

 その辺もミステリーになっているが、由紀は病院のアルバイトで子ども患者と親しくなり、敦子は老人ホームでスタッフをしている訳ありの中年男性(稲垣吾郎)との話があって、それが交差する展開になる。それで2人がたまたま手を取り合って、病院や老人ホームの闇も含めて、そこから脱出を企てる。少女の世界は狭いけど、本当はもっと広いのではないか。そんなメッセージを託した。

 −2人が街を見下ろすシーンがそれを表現している。

 愛知県蒲郡市であの場所が見つかって映画ができると思った。それくらい、それまで息苦しい青春に付き合っていた気がするし、闇にいる2人に映画を見ている観客に寄り添ってもらいたい。怒りを純化した疾走シーンを用意したが、あるいは今の時代の少女をのぞき見するような感じでもよくて、共感してもらえればうれしい。

 −少女2人の周りに細かいトリックが仕掛けてある。

 それはネタばらしになるので言えないけれど、そうでないとミステリーにならない。人と人のつながり、謎の行動の面白さ。例えば、敦子が剣道でケガをした古傷の足はもう治っているのに、まだ引きずっているのはなぜかとか、原作を大事にしながら映画ならではの表現で見せている。

■演劇的シーン

 −冒頭に出て来る遺書は誰が書いたのかとか。

 あの遺書は1人の少女が書いたものだが、それを数人の少女に読み上げさせて、それが少女たち全員の静かな怒りであり心の叫びだというつもりで演劇的なシーンで撮った。少女たちの闇は、暗くて怖いものであるけど、醜いものを隠してくれる、逃げ込める場所にもなり得る。案外、そこに「自由」が広がっているのかもしれない。闇は絶望だけではないような気がする。

 −次回作は?

 重松清さん原作の「幼な子われらに生まれ」(浅野忠信主演、来年公開)。WOWOWで撮った「硝子の葦」(原作・桜木紫乃)と、中年サラリーマンの物語「オヤジファイト」もDVDが出ているので見てほしい。

 みしま・ゆきこ 大阪府出身。18歳でインディーズ映画を撮り始め、神戸女学院大卒業後NHKに入局。「トップランナー」などを担当。2003年に劇映画を撮るために独立。助監督をしながら脚本を勉強し「刺青〜匂ひ月のごとく〜」で監督デビュー。以後「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」「繕い裁つ人」などを連作。特異な才能を発揮している。