日曜インタビュー

シリアスで笑えるように

映画「疾風ロンド」
監督 吉田 照幸
2016年11月27日

東野原作&阿部主演に挑戦

「笑いのあるサスペンス映画を目指した」と話す吉田照幸監督=大阪市北区のカンテレ
阿部寛=(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

 東野圭吾の同名サスペンス原作を映画化した「疾風ロンド」(東映配給)が大阪ステーションシティシネマほかで正月映画として公開された。阿部寛と大倉忠義、大島優子のトリオがスキー場で追いつ追われつのアクションを展開。「シリアスで笑える娯楽作品に。東野原作&阿部主演のプレッシャーに負けないように挑戦した」という吉田照幸監督に話を聞いた。

■喜劇的センス

 −NHK「サラリーマンNEO」の監督が東野サスペンスに挑戦。

 東野原作の中でもコメディー色が強い作品ということもあって、サスペンスとコメディーを融合させた作品になるのではないかと思って引き受けた。東野原作に挑戦するということと同時に、今売れっ子の阿部寛さん主役ということもプレッシャーで、大分覚悟が必要だった。阿部さんはドラマ「結婚しない男」のように喜劇的センスを持っている人だからいけるという気持ちは強かった。

 −スキー場でのロケという大がかりな撮影だった。

 もう一つの見せ場は雪山のロケーションにおけるアクションと人間ドラマの組み合わせで、医科学研究所の所員である阿部さんが、極秘の生物兵器を盗まれて犯人を追いかける中、それに協力するパトロール隊の大倉忠義さんと大島優子さんが絡んで、サスペンスの中に笑いを入れて楽しく見られる作品にしたかった。

 −阿部がスキーが下手なのがおかしい。

 阿部さんはスキーをするのは20年ぶりとかで、撮影前に大分練習されたが、役的には下手という設定だからちょうどよく、実際に身体の大きい阿部さんが滑ってこけるのがおかしいし、スキーが得意な若い大倉、大島さんとのやりとりが面白くなった。運動神経がいい大倉さんは阿部さんと一緒に練習し上手になったし、大島さんは栃木の生まれで9歳からスキーをやっていたというからカッコよかった。

■懐を大きく

 −映画監督はこれが2本目になる。

 「サラリーマンNEO」を企画して長く続けたのでコントのイメージが強くなっているが、「あまちゃん」など自局のドラマもやっており、自分なりに考えるところがあって、スタッフの意見を取り入れることでドラマの幅が広がることが分かった。映画は「サラリーマンNEO劇場版(笑)」に続いて2本目だが、もう一つ大きな映画にするために、懐を大きくして取り組んだ。

 −阿部は「NEO」の吉田演出を期待していると。

 僕は阿部さんが持っているセンスをそのまま出していただいて、それに寄り添う形で雰囲気作りをしただけという感じ。後はスタッフの力に頼ったし、撮影ではスキーアクションを撮るためにベテランの柳島克己カメラマンに参加してもらって阿部さんのスキーシーンや、大島さんと怪しい謎の男を演じたムロツヨシさんの乱闘の追いかけっこシーンなどを撮ってもらった。

 −「007」のアクション場面を見ている感じ。

 ロケした野沢温泉スキー場がやたらでっかくてどうなるかと思ったが、スタッフのおかげでとても楽しい撮影になった。阿部さんの少しとぼけた感じとか、欲望に素直に反応した演技が笑いを誘って面白い。大倉さんのボケ演技ありながらのシリアスな芝居も真っすぐでよかったし、大島さんがそれを受けてくれていい感じで、トリオの和が映画の幅を作ってくれた。

■自分を信じて

 −正月映画の先陣公開作品だから期待は大きい。

 コントは失敗しても撮り直しがきくが、映画はそれがきかない。だから自分を信じ、自分が楽しめる作品を目指した。一時期、コントの優秀スタッフが同僚だった大友啓史(元NHKで、現在映画監督)に引き抜かれるというハプニングがあったが(笑)、今は落ち着いている。あとはお客さんに託すしかない。楽しんで見てもらえるとうれしい。

 よしだ・てるゆき 1969年生まれ。山口県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局。 コント番組「サラリーマンNEO」 の企画・演出を担当し人気番組に。「サラリーマンNEO劇場版(笑)」(2001年)で映画監督デビュー。その後、「あまちゃん」「となりのシムラ」「洞窟おじさん」など。現在、NHKエンタープライズのプロデューサー。